エクソシスト/デジタル・リミックス 25周年記念版



★film rating: A
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。


東京国際ファンタスティック映画祭にて、オリジナル版のステレオ音声をドルビーデジタルのサラウンド・リミックスしての上映だった。テレビでは何回か観ているが、劇場の大画面で観るのは初めて。子供の時分ではやや退屈に感じられた重厚なドラマを堪能した。


ストーリーは有名だろう。映画スターのクリス・マクニール(エレン・バースティン)の娘リーガン(リンダ・ブレア)に異変が起きる。汚い言葉でわめき、形相は変わり、身体に文字が浮かび上がる。部屋は揺れ、物が飛び交う。現代医学の粋を尽くしても原因は特定出来ず、万策尽きたかと思われた時、最後の望みとして悪魔祓い(エクソシズム)をイエズス会に依頼する。


TVでのカット版は既に何度か観ていたのだが、今回のノーカット版を観た際に驚いた。122分の上映時間のうち、有名な悪魔祓いのシーンは最後の20分程度しかないのだ。それまでの時間はマクニール家を突如襲った恐怖の描写と、それに対する最新治療の描写に費やされている。現代医学でも原因を特定できず、それならばと精神科医に依頼しても駄目。治療シーンは真実味に溢れ、特に病院でリーガンの首に針を打って採血する場面が恐ろしい。首に打ち込まれた太い針から血が吹き出す描写の怖いこと。科学的・医学的場面を徹底的に描き込んでいる為に、科学万能の現代に悪魔祓いが満を持して登場しても、全く違和感がない。見せ場の連続だけで持たせようとする映画とは方法論からして違う。これがリアリティで、映画の技術なのだ。


ウィリアム・ピーター・ブラッティの原作は未読だが、彼自身による脚本は対立のドラマに彩られている。神と悪魔、善と悪、科学と宗教、信仰と不信、と重層的な構成を取っているのだ。特に時間を割いているのが、精神科医でもあるカラス神父(ジェイソン・ミラー)の苦悩。若き神父は母親を失った為に信仰も失いかけている。その彼が考古学者でエクソシストでもある老メリン神父(マックス・フォン・シドー)と共に、リーガンに憑いた悪魔に立ち向かうのだ。また、神父たちの日常生活も垣間見られたのが興味深い。煙草も吸えばバーでビールを飲む、スポーツもする。意外と普通でストイックでも無いのが、予想外で面白い。


フリードキンの演出は全体にドキュメンタリ・タッチで迫力たっぷり。刑事映画『フレンチ・コネクション』(1971)と並ぶ傑作だ。オーウェン・ロイズマンの撮影はドキュメンタリ・ルックな中に光と闇を切り取り素晴らしい。有名なポスターの絵柄、街灯に浮かび上がるマクニール家の前に、メリン神父が立つショットはやはり印象深い。


マイク・オールドフィールドの「チューブラー・ベルズ」や、現代音楽の使用も効果的だった。


エクソシスト/デジタル・リミックス 25周年記念版
The Exorcist: 25th Anniversary Special Edition