X-MEN:フューチャー&パスト



★film rating: A-
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

2023年。人類は自らが作ったロボット・センチネル軍団の暴走により、滅亡の危機に瀕していた。元々センチネルは、ミュータントの氾濫が人類を追いやるとの危機感により、科学者オリヴァー・トラスク(ピーター・ディンクレイジ)が作ったものだった。しかしセンチネルはミュータントのみならず、人類に対しても攻撃して来たのだ。ミュータントと人類の共存を唱えるミュータントのリーダー、プロフェッサーX(パトリック・スチュワート)は、人類への徹底抗戦を唱えるかつての親友であり宿敵であるマグニートーイアン・マッケラン)と手を組み、事態を阻止しようとしていた。彼らはキティ・ブライド(エレン・ペイジ)の能力を使って、ウルヴァリンヒュー・ジャックマン)の魂をトラスクがセンチネルを開発する前の1973に送り込む事にする。2人と袂を分かったミスティーク(ジェニファー・ローレンス)によるトラスク暗殺未遂が1973年に起こり、それによりミュータントに対してのセンチネル開発が実現化するのだ。ミスティークを探し出し、暗殺未遂自体を阻止しなければならない。過去に送り込まれたウルヴァリンは、反目しあう若き日のプロフェッサーX(ジェームズ・マカヴォイ)とマグニートーミヒャエル・ファスベンダー)に出会う。センチネルによる苛烈な攻撃を受ける隠れ家での2023年における攻防戦と、1973年における暗殺計画阻止の2つが同時に進む。


前作『X-MEN:ファースト・クラス』は、X-MENシリーズのリブート編として、彼らの若き日々を描いた作品でした。しかもシリーズ中で1番面白く、1番出来が良かった映画でした。監督と脚本(ジェーン・ゴールドマンと共同)を担当したマシュー・ヴォーンは、『キック・アス』に続いての金星。ですから本作でスケジュール上の都合でヴォーンが降板し、過去2作品を担当していたブライアン・シンガーが再登板とのニュースを聞いたときには、落胆したものでした。


いや、シンガーはダメな監督ではないのです。暗い情感を根底に湛えたシリアスな作風と、強烈な緊張感の持続が出来る技術力を持ち合わせた、優れた監督だと思います。出世作である『ユージュアル・サスペクツ』など、その最たるものでしょう。でもその資質は、燃えるアクションが重視される爽快系アメコミ映画とは合っていないように思えたのです。シンガー監督によるアメコミ映画群である『X-メン』『X-MEN2』『スーパーマン リターンズ』などをご覧になれば納得される事でしょう。どれもアメコミ娯楽映画としての爽快感に欠ける映画でした。しかしシンガーの前作である家族向けファンタスティック・アドベンチャー映画にして、初の3D映画だった『ジャックと天空の巨人』を観て、ちょっと考え直しました。明るく爽快感のある特撮全開のスペクタクル映画もいけるのでは?と。


長々書きましたが、要は本作『X-MEN:フューチャー&パスト』は、シンガーのアメコミ映画としてもっとも成功した作品だと言いたいのです。2つの時代をタイムリミットのある危機的状況としてスリリングに同時進行に描き、人物の暗い情念を織り交ぜ、つまりアクション主体ではなく、シンガーの得意なスリリングなドラマ映画として成立していたのです。ですから時にケレンのある奇想天外なアクション(特に前半に用意されている、クイックシルバー大活躍の場面)によって映画にメリハリがつき、非常に面白いものとなっていました。文字通り過去のキャスト総出演映画で嬉しいのだけど、ウルヴァリン狂言回しに、マグニートー、プロフェッサーX、そしてミスティークを巡るドラマを、映画の中心に据えたのが成功しています。シンガーの演出も力の入ったものでしたが、サイモン・キンバーグによる脚本がとても良かったと思います。


役者では、さすがに大スターになったヒュー・ジャックマンに目が行きますが、ジェームズ・マカヴォイミヒャエル・ファスベンダーの2人にも役者として見どころがあります。誰かが図抜けて目立つのではなく、巧者が見せるアンサンブル演技が楽しました。


3D映画としては前半で感心させられ、特にクイックシルバー大活躍場面は立体効果、奥行き効果も存分に使われており、観ていて楽しい。もっとも映画が上出来ゆえ、映画が進むに連れて3D効果に注意が行かなくなるのですが。


先日観て感心させられた『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』といい、本作といい、アメコミ映画は円熟期に入ったようです。大人も子供も楽しめる単なる特撮満載アクションではなく、しっかりしたテーマをがっちり描きつつ、シリアスで大人の鑑賞にも耐えうる娯楽映画に仕立ててあって。


過去作品、特に『ファースト・クラス』を観ていないと分かりにくいという欠点はありますが、過去のシリーズが苦手だった人でも、これはお勧め出来る映画です。


X-MEN:フューチャー&パスト
X-Men: Days of Future Past

  • 2014年|アメリカ、イギリス|カラー|131分|画面比:2:35:1|3D撮影、2D/3D上映作品
  • 映倫(日本):G
  • MPAA (USA): PG-13(Rated PG- 13 for sequences of intense sci-fi violence and action, some suggestive material, nudity and language.)
  • 劇場公開日:2014.5.30.
  • 鑑賞日:2014.6.6.
  • 劇場:TOHOシネマズ横浜ららぽーと 12/デジタル3D上映鑑賞。公開2週目の23時50分からの金曜ミッドナイトショウは20人ほどの入り。
  • 公式サイト:http://www.foxmovies.jp/xmen/ 作品情報、動画など。