アニマトリックス ファイナル・フライト・オブ・ザ・オシリス


★film rating: B+
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。


『アニマトリックス』と名付けられたこのプロジェクト、日本製アニメに強い影響を受けたウォシャウスキー兄弟が作った『マトリックス』の世界を、主に日本アニメのスタッフによって9つの短編として作り上げるというもの。今回ご紹介する『アニマトリックス/ファイナル・フライト・オブ・ザ・オシリス』はその中の1篇で、『ドリームキャッチャー』の前にくっつけられて公開されている。『マトリックス』と続編『マトリックス リローデッド』を結ぶ重要な作品、という触れ込みだ。

ホバークラフトオシリス号は、地球を支配するスーパーコンピュータ・マトリックスによる、人類の地ザイオンへの攻撃開始を目撃する。オシリス号乗組員は探索&攻撃マシーン・センティネルの群れからの追撃を交わしながら、一刻も早くザイオンに連絡を取らなくてはならない。


この短編CGIアニメは、脚本はウォシャウスキー兄弟自身、音楽も本家同様のドン・デイヴィスによるもの。『ファイナルファンタジー』(2001)と同じくスクエアUSA製作によるCGI映像は同作を凌駕していて、何よりもまずその”画”に目が引き付けられる。特に見せ場は、前半にあるヴァーチャル・リアリティ内の和風道場での斬り合い訓練。東洋系美女と黒人美男子との日本刀を使ったレクリエーションは、斬り合ううちに互いの衣服が無くなっていく展開。こういった幼児的というか、エロティックな趣向はウォシャウスキーの趣味のようだが、斬り合う2人がどうやら互いに気がある様子を、高度な技術力に裏打ちされた表現力で描写している。チャンバラアクションも中々だが、肉体のスピード感と真剣の重量感の表現はあと一歩か。但しキャメラワークはアニメーションならではの工夫が見られる。


じゃれ合いから一転して、現実世界におけるオシリス号とセンティネル群との追撃戦は迫力たっぷり。CGI技術は人間よりもやはりこういった映像の方がまだまだ得意なようだ。映画は並行して東洋美女のマトリックス世界での緊急連絡の為の疾走も描き、緊迫感を盛り上げる。高層ビルからのジャンプなどのアクションも、高さ方向や奥行きの表現力はさすがアニメーション。こういったケレンが『ファイナルファンタジー』に欠落していたのだ。


11分間の作品で分かるのは、『マトリックス』で描かれていたのは巨大なキャンバスのほんのわずかにしか過ぎず、ネオやトリニティらが乗っていたネブカドネザル号は孤独に闘っていた訳ではない、ということ。独立した作品としては成立しないという短所もあるが、ハードボイルドなラストも印象的で、『マトリックス リローデッド』への期待を煽るに十分な短編だ。今度はさらにどこまでバカをやってくれるのか、オタク兄弟監督の妄想と趣味の炸裂に期待しようか。


アニマトリックス ファイナル・フライト・オブ・ザ・オシリス
The Animatrix: Final Flight of the Osiris