X-MEN2


★film rating: B+
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。


2000年に製作された『X-メン』の続編が『X-MEN 2』と邦題も英語になって帰って来た。主要キャストとスタッフは前作と同じ顔触れ。続編物の常として人物紹介を省いたのは成功で、物語もスケールアップしている。


メイン・プロットはミュータント抹殺を目論むストライカー大佐(初代ハンニバル・レクターことブライアン・コックス)の脅威に対しX-メンが闘う、というもの。そこに絡むサブプロットも興味引かれるものだ。前作のラストで囚人となった過激派ミュータントのマグニートーイアン・マッケラン)はどうなるのか。X-メンの一員となったウルヴァリンヒュー・ジャックマン)の抹消された過去の記憶は蘇るのか。ウルヴァリンジーン・グレイ(ファムケ・ヤンセン)、サイクロップスジェームズ・マースデン)の三角関係の行方は。ローグ(アナ・パキン)とアイスマンショーン・アシュモア)の若い恋は。


これらのエピソードを単純なプロットに肉付けしていて、これはこれで中々に内容盛りだくさんな内容である。


前作で発見された”若き日のクリント・イーストウッド”ことヒュー・ジャックマンは、この映画でもスターらしさに輝いている。アンサンブル演技が要求される作品なので出ずっぱりでないのが残念、と思わせるのはその証し。ニヒルで内に怒りを秘めた役を体現する確かな演技力と、スターたる豊かな資質は、今後も益々楽しみだ。対称的にアカデミー賞を受賞しても前作並に陰の薄いハル・ベリーは、今回もやっぱり神妙。これは脇役扱いだから仕方が無いか。女性陣では、前作でフィーチャーされていた少女ローグ(アナ・パキン)よりも、悩めるテレパスことジーン・グレイに焦点が合っている。


強面ミュータントでは全身真っ青な鱗に覆われた全裸美女ミスティーク(レベッカ・ローミン=ステイモス)がさらに大活躍。誰にでも変身でき、武術に優れてハイテクにも強く、狡猾で始末に悪い彼女は、”素顔”まで見せてくれる大サーヴィス。思わせ振りな行動も面白い。新顔ではやはり全身まっ青のナイトクローラーアラン・カミング)も活躍し、映画の冒頭にあるホワイトハウス襲撃から得意技の瞬間移動で楽しませてくれる。カミングも儲け役ながら悲哀を滲ませて好演、お得意の演技の範疇でありながらもやはり上手い。


若手・中堅どころが元気な一方で、パトリック・スチュワートイアン・マッケランの大ヴェテラン2人はやや影が薄い。特にスチュワートは今回は散々やられっ放しだし、マッケランは中盤にあるあっと言わせる脱獄場面で悪の貫禄を見せるものの、それ以外はしどころがない。


演技派をずらり並べ、ハリウッド大作映画にしてはメインストリームとはちょっと違う娯楽色をやや抑え目だった前作に対し、ブライアン・シンガーは今度はより一般的な作風に切り替えた。お陰で演出にマイナー臭さが消え、戦隊ものというか『サイボーグ007』というか、各人の得手・不得手を利用した派手なエピソードの数々は映画をよりコマーシャルなものへと変化させている(マイケル・ケイメンからバトン・タッチされた、シンガーの盟友ジョン・オットマンの派手なフル・オーケストラ・スコアも同様である)。


しかし大作らしいスケール感が”普通の”娯楽映画寄りになっていて、シンガーならではの登場人物の隠されたどす黒い感情が薄くなったのも事実。『ユージュアル・サスペクツ』や『ゴールデンボーイ』のアクはスポイルされてしまったのだろうか。終盤を観るにつけまだ続きをやりそうなので、次は大作アクションでありながらシンガーらしい暗い人間ドラマも観てみたいと思った。折角差別される側のミュータントたちを主役に据えているのだから、鬼気迫る凄まじいまでの怒りを描いてもらい、娯楽作でありながら人間の本質をえぐり出す作品にすることも可能だろう。実際にはアンサンブル演出に秀でた才能で声が掛かったものの、本来ならばそういった暗さにブライアン・シンガー起用の意味がある筈だ。


ただそこまで行かないのもハリウッド娯楽大作だからか。かなり楽しませてもらっても、余り跡を引かない作りにちょっと物足りなさも感じるのは、無いものねだりなのだろうか。


X-MEN2
X2

  • 2003年 / アメリカ / カラー / 136分 / 画面比:2.35:1
  • 映倫(日本):指定無し
  • MPAA(USA):Rated PG-13 for sci-fi action/violence, some sexuality and brief language.
  • 劇場公開日:2003.5.3.
  • 鑑賞日時:2003.5.10.
  • 劇場:ワーナーマイカルシネマズ新百合ヶ丘8 ドルビーデジタルでの上映。公開2週目の土曜レイトショー、238席の劇場は9割の入り。
  • パンフレットは700円。各キャラの原作アメコミ本での設定なども簡単な解説があり、宜しい感じ。最近の大作はすっかりこの価格設定が成されているようである。
  • 公式サイト:http://www.foxjapan.com/movies/x-men2/ ヒュー・ジャックマン来日記者会見採録、ミュータント別人気投票、X-MEN紹介コーナーなど。クイズに正解すると、キャスト直筆サイン入りポスターがもらえる懸賞付あり。だがこのクイズ、映画観ていないと分からないんだな・・・。動画などの派手なものは、リンク先の北米版公式サイト「http://www.x2-movie.com/」に全てあり、先には日本語ページも。こちらは大作映画らしく、えらい気合の入ったサイトである。