グランド・イリュージョン



★film rating: B
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

4人のマジシャン、アトラス(ジェシー・アイゼンバーグ)、メリット(ウディ・ハレルソン)、ヘンリー(アイラ・フィッシャー)、ジャック(デイヴ・フランコ)で構成されるフォー・ホースメンは、ラスヴェガスでのステージに居ながら、リアルタイムでパリの銀行から多額の現金を盗み出してしまう。会場の観客は大熱狂するが、FBIとインターポールは即座に動いた。FBI捜査官ローズ(マーク・ラファロ)とインターポール捜査官アルマ(メラニー・ロラン)は、合同捜査を早速開始する。億万長者トレスラー(マイケル・ケイン)というパトロンが付いているフォー・ホースメンの次の犯行を阻止すべく、2人はマジックのネタバラしを生業とするサディアス(モーガン・フリーマン)に手助けを求める。


マジックと映画の相性は悪い、と私は思っています。目の前で「編集なし」で驚かしてくれるショウと、編集が命の映画とでは、全く方向性が違うからです(TVのマジックショウの場合は、その場にいる観客が「証人」になってくれている前提なので、少々事情は異なります)。だから冒頭でジェシー・アイゼンバーグが見事なカードさばきを見せてくれると、その手際に感心させられつつも、「マジック自体はどうせ映画だし…」と冷めてしまいました。とはいえ、ちょっとワクワクさせられる導入部には違いありません。だってマジシャンが主演の、しかも犯罪映画というではないですか。


実際のところ、ルイ・レテリエのテンポ重視の演出もあって、2時間弱の上映中は退屈させられません。特に前半の求心力は中々だったと思います。ラスヴェガスのステージがいきなりVFXだらけ(文字通り、ステージを捉えたショットからしVFX使用)であっても、銀行襲撃のくだりでは「え?どうなるの?」と思わさせてくれたからです。またレテリエ自身が『トランスポーター』シリーズの監督を務めたとあってか、カーチェイス場面になると元気があるのが面白かったのでした。ブライアン・タイラーの音楽も煽ります。しかもこの豪華なキャストですよ。若手中堅ヴェテランと豪華そのものです。俳優は皆綺麗に撮られていたし、特にロラン嬢はアップも多く、彼女を観るだけでも価値があります。眼福とはまさにこの事。但し映画のテンポ重視になり過ぎていて、キャストによっては個性が余り生かされていないのが勿体無かったです。


ソーシャル・ネットワーク』同様にジェシー・アイゼンバーグが早口でまくし立てていても、その相似点ですら余り気になりませんでした。しかし余りにVFX乱用の為に、正直言って中盤以降はかなり緊張感がそがれてしまいます。かなり荒唐無稽な内容にやや白けてしまったからです。観ながら「『ルパン三世』かよ…」と心の内でつぶやいてしまった位です。しかしそれもそう悪い事ではありません。途中からはそういう映画なのだと割り切って、最後までそれなりに楽しめました。


それでもこれは残念ながら私が観たい映画ではなかったようです。強奪ものは好きなジャンルなだけに、事前の期待はリアリスティックな犯罪トリック物でした。ですからVFXに頼り切ったり、現実面での荒唐無稽な実行計画だったりではなく、もっと現実的で緻密に見せて欲しかった。その上で騙して欲しかった。VFXを使えば何だって出来るし、そうなると何でもアリになって、逆に内容に驚きが無くなってしまいます。製作が決定した続編は、もう少し違う趣向でお願いしたいです。


グランド・イリュージョン
Now You See Me

  • 2013年|フランス、アメリカ|カラー|115分|画面比:2.35:1
  • 映倫(日本):G
  • MPAA (USA): Rated PG-13 for language, some action and sexual content.
  • 劇場公開日:2013.10.25.
  • 鑑賞日時:2013.10.25.
  • 劇場:TOHOシネマズ ららぽーと横浜6/公開初日の金曜0時15分からの回は30人程の入り。
  • 公式サイト:http://www.grandillusion.jp/ 予告編、映画紹介、フォー・ホースメンのトリック等。