サイド・エフェクト



★film rating: A-
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

インサイダー取引実刑を受けていた夫マーティン(チャニング・テイタム)が戻って来てから、妻エミリー(ルーニー・マーラ)は鬱病を再発してしまう。医師バンクス(ジュード・ロウ)は抗うつ薬を処方してエミリーの治療に当たるものの、彼女は取り返しのつかない事件を起こしてしまった。エミリーが使っていた薬と、それを処方していたバンクスへの風当りが高まる中、バンクスは事件の謎を探ろうする。やがて彼は予想だにしなかった真相に突き当たるのだった。


スティーヴン・ソダーバーグ最後の劇映画監督作品との触れ込みの本作は、ソダーバーグが監督・撮影・編集といつものように1人3役を兼任。脚本はソダーバーグの前作『コンテイジョン』でも組んでいたスコット・Z・バーンズ。あちらはパンデミックを徹底したリアリズムで描いたスリラーの佳作でした。ヒロインには傑作『ドラゴン・タトゥーの女』での無表情なヒロイン、リスベット役が素晴らしかったルーニー・マーラ。この布陣自体がミスリードを誘っているのではないか、と思わせるくらいに、本作は凝った内容のスリラーだったのでした。ミスリードと言えば屈強なチャニング・テイタムの起用もそうでしょう。主人公のジュード・ロウは、これまた『コンテイジョン』のはた迷惑なジャーナリスト/ブロガー役から一転しての真摯な医師役。これもミスリードを狙っていると勘ぐるのはやり過ぎでしょうか。ロウはヒッチコック映画ばりに追い詰められる主人公を、焦燥感たっぷりに演じていて良かったです。


多才なタレントの仕事を観られる喜びを味わえる映画でしたが、それでもこの映画は、ルーニー・マーラのある意味アイドル映画にもなっています。確かにリスベット役は素晴らしかったのですが、あちらは基本的に無表情な外面に、徹底した非情さと、高度な知能と繊細な感情をちら見させるものでした。難度が高い演技なのは確かでしたが、儲け役だったとも言えます。本作ではがらり打って変わって、全く違う素質を見せてくれます。まさかこんなにカラフルな演技を見せてくれる女優だったとは。儲け役が続くとは言え、それらをきっちりとこなせるところに実力が伺えます。この映画では彼女の演技自体が大きな見どころになっているのです。


一切の無駄が無い、ソダーバーグのキビキビとした演出・撮影・編集は、もはや名人芸です。この人は娯楽路線の映画の方が柄に合っているように思えてなりません。私としては堅苦しかった『トラフィック』や『チェ』2部作等よりも、のびのびと演出し、且つ娯楽映画として成立している本作や、あるいは『アウト・オブ・サイト』といった映画の方が好きです。タイトでありながら娯楽を忘れていない作風は、そんじゃそこらでは見られないもの。『KAFKA/迷宮の悪夢』等と言う、映像にやたら力が入った初期作品がもやは懐かしいくらいです。医療業界への批判やメッセージが込められつつも、それはあくまでもスパイス。これ見よがしの画等ない冷静なHD撮影で、がっちりした脚本で観客に驚きを与えるスリラー/ミステリに徹しています。


音楽はソダーバーグ映画で珍しやトーマス・ニューマン。いつものクリフ・マルティネスはどうしたんだろ…と思って映画を観始めたら、題材にもドンピシャの曲を付けてさすがでした。相変わらず地味だけど上手い。


色々書いていて矛盾するようですが、内容に関しては余り情報を仕入れないでご覧になるのをお勧めします。


サイド・エフェクト
Side Effects

  • 2013年|アメリカ|カラー|106分|画面比:1.85:1
  • 映倫:R15+(刺激の強い性愛描写及び刃物による殺傷の描写がみられ、標記区分に指定します。)
  • MPAA (USA): Rated R for sexuality, nudity, violence and language.
  • 劇場公開日:2013.9.6.
  • 鑑賞日時:2013.9.6.
  • 劇場:TOHOシネマズ ららぽーと横浜9/公開初日の金曜0時20分からの回は、私も含めて14人の入り。
  • 公式サイト:http://www.side-effects.jp/ 予告編、作品情報、Facebookへのリンク等。