クロニクル



★film rating: A-
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

内気でいじめられっ子の高校生アンドリュー(デイン・デハーン)、いとこのマット(アレックス・ラッセル)、その友人スティーヴ(マイケル・B・ジョーダン)は、ある夜、森の空き地の地面に開いた穴を見つける。穴の中は洞窟となっており、奥には謎の発光体があった。3人は気を失ってしまい、どうやって脱出したのか記憶も無い。だがそれ以来、3人は念動能力(テレキネシス)を身に付けていたのだ。最初は小石やテニスボールを飛ばせるくらいだったが、徐々に能力は強力になっていく。やがて自分の身体も空高く飛ばせてしまうくらいに。


1時間半弱の短い上映時間をフルに使った、切れ味が嬉しい小品です。最初から最後まで弛緩せずに、一定の緊張感を保持出来た快作でした。超能力も序盤から出し惜しみせず、使い方も徐々にエスカレートしていくのでスリリング。知っているキャストは、最近注目を浴びているデイン・デハーンとアンドリューのDV父役マイケル・ケリーくらい。全体に無名のキャスト中心だったのが、かえって普遍的青春ものとして見られるようになっていました。


青春映画の体裁を取っているSFスリラーで、内容はスティーヴン・キングの名作『キャリー』が下敷きになっていると言っても良いでしょう。地味に始まって徐々に盛り上がり、終盤は大スペクタクルという作りもキングの小説のよう。超能力の使い方も、最初は『超能力学園Z』みたいに、女子高生のスカートめくりやら、スーパーでのテッドみたいなイタズラなどで笑わせてくれます。青春を謳歌するも、とある事から挫折を経験してしまい、そこから…という展開になります。ここら辺は中々スムースな話の流れと演出で良かったです。


映画は一応モキュメンタリの体裁を持っていて、アンドリューや他の人が撮影した映像を繋ぎ合わせているという設定です。この映画最大の発明は、全編手持ちカメラ撮影というモキュメンタリの手法を用いながら、途中からは「手持ち」ならぬ「超能力持ち」という、自由自在にカメラを動かせる設定にした事でしょう。よって超能力でカメラも空中浮遊可能という反則技によって、カメラワークが自由自在になります。よってカメラ日誌という狭い映像世界になりそうなものを、より広く捉えられるようになったのです。こんな手があったとは思いもよりませんでした。またこの手法がラストシーンで効果的に使われているのも見逃せません。


ジョン・ランディスの息子マックス・ランディスの脚本も、青春の鬱屈と解放感が描き出しています。ジョシュ・トランクの演出も手際良く、効果的な映像も多かった。後半は大作映画そこのけのシアトル市内での大スペクタクルになり、サーヴィス満点。VFXは全て見事とはいきませんが、納得できるショットが多い。これもデジタル時代ならではの低予算VFXなのです。観ながら、大友克洋の『童夢』実写映画化企画はいらないと思いました。


若手3人の中ではやはり、今注目のデイン・デハーンが図抜けて素晴らしい。その繊細な演技に目が行きました。俳優の演技だけではなく、終幕の大スペクタクルも含めて、大画面で観るべき映画なのです。


青春SFスリラーの佳作として、心に留めておきたい映画。お勧めです。


クロニクル
Chronicle

  • 2012年|アメリカ|カラー|84分、89分(ディレクターズ・カット)|画面比:1.85:1
  • 映倫:PG12(超能力による未成年者の非行、殺傷の描写がみられるが、親又は保護者の助言・指導があれば、12歳未満の年少者も観覧できます。)
  • MPAA (USA): Rated PG-13 for intense action and violence, thematic material, some language, sexual content and teen drinking.
  • 劇場公開日:2013.9.27.
  • 鑑賞日時:2013.9.27.
  • 劇場:TOHOシネマズ ららぽーと横浜9/公開初日の27日金曜23時55分からの回は、10名程の入り。
  • 公式サイト:http://www.foxmovies.jp/chronicle/ 映画情報、ニュース、予告編、プロダクション・ノート等。パンフレットが作成されていない映画なので、プロダクション・ノートは貴重な情報源。