ホワイトハウス・ダウン



★film rating: B+
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

離婚した妻の元で育てられている官邸マニアの娘エミリー(ジョーイ・キング)の尊敬を勝ち取る為、警護官ケイル(チャニング・テイタム)は大統領警護官採用試験を受けるものの、落ちてしまう。ケイルとエミリーはその足でホワイトハウス見学ツアーに参加するが、突如官邸は武装集団に乗っ取られ、大統領ソウヤー(ジェイミー・フォックス)が人質に取られてしまった。


先に公開された似たような設定のアクション『エンド・オブ・ホワイトハウス』と比べると、本作は随分とトーンが違います。観ている間は緊張感があってまぁ面白く、超暴力的で血生臭かった『エンド〜』に比べて、娯楽アクション大作映画としてはこちらの方がゆとりがある作り。序盤のホワイトハウス制圧のスケール感と迫力は『エンド〜』の方が凄まじく、また無双男の一方的な殺戮がひたすら続くあちらに対して、こちらは人間味のある男が苦戦奮闘しながら戦っていく様となっており、本作の方が感情移入がしやすいものでした。要所でのユーモアも含めて脚本の工夫が凝らされていたのにも注目したい。終幕に色々と伏線が回収されていくのも楽しく、『ゾディアック』等の脚本家ジェームズ・ヴァンダービルトの功績が光ります。敵のリアリティも本作の方に軍配が上がりました。


『エンド〜』とのトーンの大きな違いは、主役を演じるスターの素質の違いにもよります。殺伐としたジェラルド・バトラーと、愛嬌のある隣のお兄さんチャニング・テイタムでもかなり違いますが、ダメ父親が娘の尊敬を勝ち得ようとする行動原理から始まって、こちらはより応援してしまいます。また『エンド〜』よりも、そして『ダイ・ハード/ラスド・デイ』よりも、まさかの正統派『ダイ・ハード』後継映画ともなっていました。脇役の描き方、ブルース・ウィリスとは違ったチャニングの愛嬌等がそう。それに何より、こちらは自慢の肉体美を披露すべく、主人公のタンクトップ姿が多いではないですか!


ローランド・エメリッヒの演出も、小技が効いている脚本のお蔭もあって快調。ホワイトハウスを破壊するのは『インデペンデンス・デイ』『2013』に連なる3本目ですか。元々大スケールの映画が得意な監督ですが、今までの最高作だった『インデペンデンス〜』以上の出来栄えとなっていました。笑いと緊張の緩急も冴え、中々楽しませてくれます。脚本の功績もありますが、アクション大作なのに終幕は感動までさせられるのです。もっとも、これでもっと切れのある監督だったら…と思わせるのも、大味エメリッヒらしいのではありますが。


チャニング・テイタムは中々の好演でしたが、大統領役ジェイミー・フォックスはもう少し大統領としての貫録が欲しいところ。ジェイソン・クラークも『ゼロ・ダーク・サーティ』での役のその後か…等と想像も出来て面白かったです。また警護官役マギー・ギレンホールも颯爽としていて印象に残りました。個人的には大統領警護官リーダー役ジェームズ・ウッズの大熱演が嬉しかったです。1980年代は主役も張っていた役者なのに、近年はすっかり脇役専門になっていて、ファンとしては少々寂しい思いをしていました。しかし本作では久々に出番も多く大活躍、大熱演。ヴェテラン役者に拍手を送りたくなりました。


劇中ではかなりの死傷者が出て出血量もそこそこあり、ナイフで首掻っ切ったりする描写もあるものの、人が撃たれたり切られたりする瞬間は見せず、その後のみを見せる手法。よってMPAA(アメリカ)ではPG-13、日本の映倫ではGとなっています。この手のアクション映画はMPAAではRになるのが普通ですが、最初からPG-13を狙っていたと思しき撮影でした。暴力を真正面から描いていた『エンド〜』と比べると、偽善を感じるのは確か。但しそのお陰で大人から子供まで楽しめる映画に仕上がっているのです。


ホワイトハウス・ダウン
White House Down

  • 2013年|アメリカ|カラー|132分|画面比:2.35:1
  • 映倫:G
  • MPAA (USA): Rated PG-13 for prolonged sequences of action and violence including intense gunfire and explosions, some language and a brief sexual image.
  • 劇場公開日:2013.8.16.
  • 鑑賞日時:2013.8.16.
  • 劇場:TOHOシネマズ ららぽーと横浜6/ミッドナイトショウ鑑賞、公開初日の金曜24時15分からの回は20人強の入り。
  • 公式サイト:http://www.whitehousedown.jp/ 予告編、作品紹介、画像ギャラリー、壁紙ダウンロード等。