ペーパーボーイ 真夏の引力



★film rating: B
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

うだるような暑さの1969年フロリダ。大学の水泳選手だったジャック(ザック・エフロン)は問題を起こして大学を中退し、何をするでもなく実家の新聞社の手伝いとして新聞配達をしていた。ちょうどそこへ兄である新聞記者ウォルター(マシュー・マコノヒー)がライターのヤードリー(デヴィッド・オイェロウォ)と共に帰郷する。彼らの目的は、保安官殺しの犯人として死刑が確定しているヒラリー(ジョン・キューザック)が冤罪ではないか、と調査する事だった。獄中のヒラリーと手紙のやり取りだけで婚約したシャーロット(ニコール・キッドマン)に、ジャックは恋をするが。


説得力にはいささか疑問が残る部分もありますが、肌にまとわり付くじっとりとしたイヤな感じも含めて、インパクトだけだと最近見た映画の中では1番でした。人種差別が残るアメリカ南部の湿地帯を舞台に、各々が心に闇を抱えた人物ばかりだと分かっていくスリラーです。


リー・ダニエルズの演出は映像面でも過剰さが目に付くし、しつこさに辟易する部分もあります。正直に言って好きなタイプの監督ではないですが、この作品には相応しかった。例えば劇中に登場する、鰐で生計を立てて沼地に住む人々たちの環境は、画面から匂ってきそう。庭には鰐が吊るされており、その引き裂かれた腹からは内臓がこぼれ落ちて来るのですから。湿度が高く臭いがきつそうな画面の中、俳優達は文字通りの熱演で、各キャラのやり過ぎ造形も含めて、圧迫感のある映画になっていました。ザック・エフロンのブリーフ1丁場面の多さ、ニコール・キッドマンの色情狂気味演技、普段は善人役が多いジョン・キューザックの正体不明振りも含めて、とにかく過剰。彼らの心の闇が少しずつ白日の下にさられるのもまた、映画に緊張感を与えています。アメリカ南部に潜む黒人差別も含めて。しかしこれら極端なまでに過剰な描写の数々が吸引力となり、最後まで興味を引いたのも確かです。


物語は単純な調査ミステリ/スリラーとしては進まず、紆余曲折を経て予想もしなかった着地点を迎えます。「ひと夏の成長青春物語」としても惨い内容。恐らく私はこの映画を二度と観ないでしょう。インパクト満点な怪作と呼ぶに相応しい異色作です。機会があれば一見をお勧めします。


ペーパーボーイ 真夏の引力
The Paperboy

  • 2012年|アメリカ|カラー|107分|画面比:2.35:1
  • 映倫:R15+(刺激の強い性愛描写、肉体損壊、数多くの性的・差別的台詞などの描写がみられ、標記区分に指定します。)
  • MPAA (USA): Rated R for strong sexual content, violence and language.
  • 劇場公開日:2013.7.28.
  • 鑑賞日時:2013.7.28.
  • 劇場:TOHOシネマズ ららぽーと横浜4/ミッドナイトショウ鑑賞、公開初日の土曜0時5分からの回は20人程度の入りです。
  • 公式サイト:http://paperboy-movie.jp/ 予告編、映画紹介、著名人のコメントなど。