L.A. ギャング ストーリー



★film rating: B
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

1949年のL.A.。ユダヤ系ギャングのミッキー・コーエン(ショーン・ペン)は急速に勢力を伸ばし、その残忍且つ情け無用のやり口に街は恐怖におののいていた。市警本部長パーカー(ニック・ノルティ)は、戦争帰りで恐れを知らぬ正義漢オマラ巡査長(ジョシュ・ブローリン)を密命チームのリーダーに抜擢。オマラはコーエンの組織殲滅の為に、組織の息の掛かっていないはぐれ者ばかりを集める。ウーターズ(ライアン・ゴズリング)、ハリス(アンソニー・マッキー)、ケナード(ロバート・パトリック)、ラミレス(マイケル・ペーニャ)、キーラー(ジョヴァンニ・リビシ)らの面々だ。部隊は警官との身元を隠してコーエンが経営するカジノ等を次々襲撃するが、やがてウーターズはコーエンの愛人グレイス(エマ・ストーン)と恋に落ちる。


実話を基にしている…といってもかなり脚色はされているのでしょう。それにしても力には力を、暴力には暴力をという徹底抗戦がアメリカらしい。昨年の『ダークナイト ライジング』上映館での乱射事件の影響による撮り直しやら、作曲家がカーター・バーウェルからスティーヴン・ジャブロンスキーに交代と、トラブルが伝えられていた映画でもあります。北米は元より国内でも評論家の方々からかなり悪評の映画なので、期待値を下げて気軽に観に行ったら、案外楽しめました。


確かに勿体無い要素は多いです。もっと各人の個性を掘り下げられたらとか、ウーターズとグレイスの恋がまるで盛り上がらないとか、緊張感にやや欠けるとか、あちこち物足りなく感じました。しかし単純明快な勧善懲悪暴力アクションとして観る分には楽しめました。ソフト帽にダブルもしくはスリーピースのスーツの男達がバンバン撃ち合うという、古式ゆかしいギャング映画。テンポ良く暴力アクションで繋いでいくので退屈しません。こういう映画ってかつてはもっと観ていました。テンポや描写は現代映画そのものですが、テレビの洋画劇場でよく放送されていた映画みたいで、何だか懐かしく観られたのです。スーツを着た男達のアクション映画…つまりギャング映画って昔はたくさんありましたが、スーツ・アクション映画は現代のジェームズ・ボンドに引き継がれているのでしょう。


ジョシュ・ブローリンはこういう娯楽アクションを背負って立つスターに、いつの間にかなっていたのですね。無表情のタフガイで内に秘めた熱い男という、文字通りトミー・リー・ジョーンズの正統な後継者になるのかな…と書いていて、昨年観た『メン・イン・ブラック3』で、ジョーンズの若いときの役を演じていたのを思い出しました。それにしてもニック・ノルティジョシュ・ブローリンは顔の作りが似ています。今回は上司と部下役でしたので、今後は機会があったら親子役で出てもらいたい。ゴズリングとエマの『ラブ・アゲイン』美男美女カップルは絵になります。エマ登場場面での赤いドレスがゴージャスでした。昨年の『デンジャラス・ラン』『人生の特等席』と、このところ急に良く見掛けるロバート・パトリックが嬉しい。初老の拳銃使いという役でした。コーエン役ショーン・ペンは、ハリウッド娯楽映画では久々にお目に掛かる、出ているだけでおっかない悪役。自分の映画製作費集めの為に出たのでしょうけど、さすがですね。少々大袈裟な演技も、また彼らしい。これを観て、ボンド映画の悪役もやってもらいたいと思いました。彼ならば『私を愛したスパイ』のクルト・ユルゲンス以来の、居るだけで怖いボス役が出来ますよ。


出来上がった派手な娯楽アクション映画を観ると、派手なジャブロンスキーの音楽で正解でした。バーウェルだともっと地味だったでしょうから。でもバーウェル起用時点では、違う構想の映画だった可能性があります。撮影はディオン・ビーブで、やはりHD撮影の映画。HD撮影映画は接写アクションの動きが汚くて気になります。それ以外は全体にリッチな画が多かった。追加撮影監督は名手キャレブ・デシャネルでした。


L.A. ギャング ストーリー
Gangster Squad

  • 2013年|アメリカ|カラー|113分|画面比:2.35:1
  • 映倫:R15+(刺激の強い肉体損壊、銃器・ナイフによる数々の殺傷・出血描写がみられ、標記区分に指定します。)
  • MPAA (USA): Rated R for strong violence and language.
  • 劇場公開日:2013.5.3.
  • 鑑賞日:2013.5.4.
  • 劇場:TOHOシネマズ ららぽーと横浜9/公開2日目の24時5分からの回は20人強の入り。
  • 公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/gangstersquad/ 予告編、作品情報、梅宮辰夫 vs 松方弘樹の予告編吹き替え対決、悪事通信など。