アイアンマン3



★film rating: A-
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

1年前に異星からの侵略をアベンジャーズの一員として防いだアイアンマンことトニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr)は、スターク・インダストリーCEOであり恋人でもあるペッパー・ポッツ(グウィネス・パルトロウ)と一緒に暮らし、幸せにも見えた。だがトニーは密かにパニック症候群という精神的ダメージを抱えていたのだ。そんな時、アメリカ政府はヒーローをトニー個人に任せるのではなく、軍が管理するパワードスーツによるアイアン・パトリオット計画として進めようとしていた。ある日ペッパーの前にシンクタンクA.I.M.の代表キリアン(ガイ・ピアース)が現れ、スターク社との提携を申し出る。ペッパーの前で最新バイオ技術のプレゼンをしたキリアンこそ、アイアン・パトリオット計画の提言者でもあったのだ。折しもアメリカはマンダリン(ベン・キングズレー)と名乗る謎の指導者によるテロ攻撃を受けていた。そしてスタークの元付き人で親友でもあるハッピー・ホーガン(ジョン・ファヴロー)は、テロに巻き込まれて意識不明の重体となり、スターク邸もマンダリンの攻撃を受けてしまう。


監督が前2作のジョン・ファヴローから、『リーサル・ウェポン』の生みの親でもある脚本家兼監督のシェーン・ブラックに交代。映画全体は随分とシリアスになりましたが、とにかく話が面白いので、先が気になってしまいます。出来としてはシリーズ最高作でしょう。予告編は良い意味でのミスリードになっており、思っていたのとは全く違う内容になっていました。演出は随分と硬派なタッチになりましたが、ユーモアもケレンも忘れていません。またちゃんと「相棒もの」映画ともなっており、シェーン・ブラックは自らの個性を出しながらも、シリーズらしさ、面白さを忘れずに仕上げ、これは間違いなく大金星。私には結構楽しめた『アベンジャーズ』より、さらに面白かったです。


そして改めて『ダークナイト』の影響の大きさも実感しました。『007/スカイフォール』も、本作も、かなり『ダークナイト』調のヒーロー映画なのです。つまり本来は荒唐無稽なヒーロー映画の筈なのに、ダークでシリアスでリアリスティックなスリラーとしての物語を用意し、アクションはあるもののそちら主体ではなく、あくまでもスリラーとして観客の興味を引っ張るという作りなのです。ですからヒーローものとしての解放感にはやや欠けるうらみはあるものの、大人の鑑賞に耐えうる内容になっています。こういった作り手の意思は好悪分かれるでしょうが、私は支持します。また前作ですっかり忘れ去られていたDo it yourself精神が復活しているのも嬉しい。全編、トニー・スタークは物作りに取りつかれています。アイアンマン マーク42って、どれだけ作っているんだ、と。アイアンマンのモデルを作り過ぎて、1体1体の個性が今一つ発揮出来ていない欠点はありますが、彼ら総登場場面には興奮させられました。物語に幾つもの驚きを用意した大人向けのプロットではあるものの、同時に溜めて溜めて溜めての語り口から、終盤のキメるところはキメてアメコミ活劇としてのカタルシスも用意されていて、これは満足に近い出来です。あともう少しテンポが速くても良かったのですが、それはわずかな瑕疵です。但し中盤はずっとSFミステリ/スリラー的内容になるので、全編に渡ってのアイアンマン大活躍を期待している向きは、やや肩透かしを食らうかも知れません。



配役も良かったです。ダウニー社長はいつになくシリアスでも、相変わらず型通りの善人でないのが良いし、ペッパーも大活躍。前作ではSFロボットものに違和感があったドン・チードルも、パワードスーツが似合う顔に思えるようになりました。ご贔屓レベッカ・ホールも出ているし、ベン・キングズレーはやはり上手い。しかしやはりガイ・ピアースです。元々薄気味悪い系の顔立ちでしたが、本作はその顔を1番活かした映画なのではないでしょうか。映画序盤のキモち悪いオタク系なルックスなぞかなり強烈。昨年観た『ロックアウト』のヒーロー振りは一体どこへ行ったのでしょうか。実力派なのに映画では勿体無い起用が多いピアースですが、その個性を珍しく上手く生かした配役でした。大統領がウィリアム・サドラーで副大統領がミゲル・フェラーという、人相悪い正副大統領の国なのは笑えます。


エンド・クレジットは名手カイル・クーパーのデザインによるもので、ブライアン・タイラーの派手派手スコアと共にカッコ良い。シリーズ初のHD撮影作は、撮影監督が名手ジョン・トールVFXサウンドもゴージャス。そしてマーヴェル映画恒例のエンドクレジット後の場面もお楽しみに。これも大笑いでした。3D効果はほどほどでしたが、大画面での鑑賞推奨の、お勧め娯楽超大作映画です。


アイアンマン3
Iron Man Three