ラストスタンド



★film rating: A-
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

メキシコの麻薬王コルテス(エドゥアルド・ノリエガ)が、FBIの厳重な警備での護送中に、部下達の手引きによって脱走した。コルテスは元天才的ドライバーで、シヴォレー・コルベットを操って時速300km以上の猛スピードで疾走、パトカーやヘリの追撃をかわして行く。必死になって捜索するバニスター(フォレスト・ウィテカー)らだったが、とうとう見失ってしまった。一方、国境近いニューメキシコの田舎町ソマートンの保安官レイ(アーノルド・シュワルツェネッガー)は、街中での怪しい動きを察する。見知らぬ男達の姿を見掛けたのだ。ひょっとしてコルテスは、この町から国境越えをするのではないか。応援の無い孤立無援の中、武器弾薬にも乏しい状況で、レイら保安官事務所の面々はコルテス阻止の為に立ち上がる。


批評家達からは好評だったものの、北米では興業的には惨敗した作品です。日本でも私が観た劇場は閑散としていました。シュワの時代はもう終わったのか。栄枯盛衰とはこの事なのでしょうか。本作の監督は、韓国で『悪魔を見た』などを発表してきたキム・ジウン。渡米後初作品…といっても、私はこの人の作品はことごとく見逃しているので初めてです。結果的にはかなり満足度の高い映画でした。


大規模な映画ではなく、むしろ昨今のハリウッド映画の中では小ぶりな方に入るでしょう。しかし正統派西部劇調に沿った内容に、血の気の多いアクションをふんだんに盛り込んだ映画となっていて、とても楽しめました。全体の印象は大味ですが、ちゃんと1場面1場面が丁寧に作られていたのにも感心します。


シュワも皺が増え、老眼鏡をかける描写などがありますが、どしっとしたスター振りと、腕力と銃器ぶっ放す安心のアクションは変わらず。この変わらなさが古いという扱いなのかも知れません。昨今のアクション映画は、ジェイソン・ボーンや007に代表されるように、スピード感が重視されますから。矢継ぎ早の展開ではなく、めまぐるしいアクションがない娯楽アクション映画の体裁は、なるほど往年の1980年代調なのは確かです。しかし単純に娯楽アクション映画として楽しめる要素ばかりが入っているので、実際には劇場で観てもらいたいもの。特に後半のアクション連打などでは、シュワ事務所の面々が次々危機に陥るようになっていて、いちいち緊張感がありました。またカーチェイス場面も面白い。観客を楽しませようとする趣向が凝らされた映画でもあるのです。


アクションだけではなく、登場人物にも面白い人が多かった。脇役にまで個性を与えて描いていて、街の住民たちの描写も笑わされます。特にガンマニア役のジョニー・ノックスヴィルは可笑しかった。実戦の経験が薄いという副保安官の面々、ロドリゴ・サントロジェイミー・アレクサンダールイス・ガスマンらもきっちりと描き分けがされていましたし、悪役ナンバー2役のピーター・ストーメアも憎々しい。しかもちょい役にハリー・ディーン・スタントンですか。こういう配役は嬉しいですね。


全体に血しぶき脳漿飛び散る描写が多いものの、映画全体は湿っぽくなく、単純明快な娯楽アクション映画に仕上がっていて、カラッとスカッとして痛快でした。緊張と笑いとカタルシスの塩梅も良く、こういう気軽に楽しめる上出来の娯楽映画は断然支持したくなります。シュワの映画の中でも上位に来る出来ですよ、これは。それが不入りとは残念至極。実際に観れば面白いし、お勧めなのですけれども。もっと客が入って良い映画です。


余り文句のない映画なのですが、敢えて不満点を挙げるとなると、ジェネシス・ロドリゲスの扱いと言っておきましょうか。コルテスに人質に取られるFBI捜査官の役で、全く見せ場無しの単なるエスニック美人というだけ。なんと勿体無い!


ラストスタンド
The Last Stand

  • 2013年|アメリカ|カラー|107分|画面比:2.35:1
  • 映倫:R15+(刺激の強い銃器による数々の殺傷、肉体損壊、鮮血飛散の描写がみられ、標記区分に指定します。)
  • MPAA (USA): Rated R for strong bloody violence throughout, and language.
  • 劇場公開日:2013.4.27.
  • 鑑賞日:2013.4.27.
  • 劇場:TOHOシネマズ ららぽーと横浜9/公開初日の土曜23時50分からの回は我々含めて9人のみという寂しい入り。
  • 公式サイト:http://laststand.jp/ 予告編、作品紹介、柳沢慎吾の爆笑!スペシャル動画、図解ラストスタンド、人物紹介、面白い話などなど、意欲的に詰め込まれたサイト。