ヒッチコック



★film rating: B
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

1959年。ケイリー・グラント主演の『北北西に進路を取れ』を大ヒットさせたスリラーの巨匠アルフレッド・ヒッチコックアンソニー・ホプキンス)は、新作として実在の殺人鬼エド・ゲインをヒントにしたロバート・ブロックのホラー小説『サイコ』の映画化に踏み切る。しかし契約していたパラマウントは娯楽ヒット路線を希望していた為、題材に難色を示して製作資金を出さず、ヒッチは自宅豪邸を担保に製作資金を調達、低予算で製作を開始する事になった。折しもヒッチの公私に渡っての重要なパートナーでもある妻アルマ(ヘレン・ミレン)は、その友人である脚本家ウィットフィールドダニー・ヒューストン)との仲が良く、ヒッチは嫉妬に苦しむ。


ヒッチコックの代表作の1つであり、また映画史に残るホラー/スリラーの傑作『サイコ』製作の裏側を描いた作品です。アンソニー・ホプキンスが特殊メイクで顔にゴテゴテ盛ってもヒッチにまるで似ていないとか、夫婦愛に焦点を絞っているけど、それより創作活動の葛藤とか裏話とかに絞って欲しかったとか、不満は色々あります。しかし『サイコ』ファンとしてはまずまず楽しめました。でもこの映画を観ると、20年来読みたかった原作の『サイコ』メイキング本が読みたくなるのです。この映画、ソウル・バスにまるで触れられていないとか、作曲家バーナード・ハーマンの扱いが軽いとかも含めて、映画の内幕ものとしての内容が非常に薄い。天才とか巨匠とか言われた男の葛藤を描くのは良いとしても、それが映画製作そのものよりも妻への嫉妬が主体というのは、余り面白味のある話ではありません。サーシャ・ガヴァシ監督作品でしたら、前作の音楽ドキュメンタリの傑作『アンヴィル!夢を諦めきれない男たち』の方がずっと良かった。本作は1,200円で1時間半、そこそこ楽しめたから、まぁ良いかな、といった感じでしょうか。


しかし初代『ベスト・キッド』ことラルフ・マッチオに、「Sayonara, RoboCo!」のカートウッド・スミス、それにマイケル・ウィンコットと、懐かしやの顔ぶれは嬉しかったです。ウィンコットと私の再会は『エイリアン4』以来だったようです。しかもエド・ゲイン役で、これが不気味でぴったりなのでした。それに全く老けてなくてびっくりしましたよ。ベネディクト・カンバーバッチと見分け付かなくなって来たジェームズ・ダーシーアンソニー・パーキンス役でしたし。スカーレット・ヨハンソンジャネット・リーも合っていたと思いました。他にもトニ・コレットジェシカ・ビール等、役者の顔触れが楽しめる映画であります。でもやはり1番素晴らしいのはヘレン・ミレンでした。時に微妙な心理を、時に大見得切って演じていて、印象が強い。60過ぎても相変わらず色気があるのもさすがです。このまま生涯フェロモン女優を貫いてほしいもの。


ジェフ・クローネンウェスのHD撮影は、当時のカラフルな映画を想起させて好ましかったです。ダニー・エルフマンの音楽は、裏方に徹していたものの効果的だったかと。因みに劇中で使われているかの有名なハーマンの曲は、ジョエル・マクリーニー指揮、ロイヤル・スコティッシュ管弦楽団演奏の版でした。


ヒッチコック
Hitchkock

  • 2012年|アメリカ|カラー|92分|画面比:2.35:1
  • 映倫:G
  • MPAA (USA): Rated PG-13 for some violent images, sexual content and thematic material.
  • 劇場公開日:2013.4.5.
  • 鑑賞日:2013.4.5.
  • 劇場:TOHOシネマズ ららぽーと横浜6/公開初日の金曜23時40分からのミッドナイトショウは、私を入れて13人の入り。
  • 公式サイト:http://www.foxmovies.jp/hitchcock/ 予告編、作品情報、実際のヒッチにまつわるエピソード集、『サイコ』裏話など。