パラノーマン ブライス・ホローの謎



★film rating: B+
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

ブライス・ホローは300年前に魔女狩りが行われた町だ。現在、そこに住む11歳の少年ノーマン(声:コディ・スミット=マクフィー)は、ホラー映画や心霊ネタが大好きで、死者と交流が出来る特殊能力の持ち主だった。しかしマッチョな父の理解は得られず、また悪ガキのアルヴィン(声:クリストファー・ミンツ=プラッセ)からのイジメも受けていた。ある日、ノーマンは叔父(声:ジョン・グッドマン)から衝撃的な事実を告げられる。300年前に封印された魔女の魂が悪霊を呼び覚ましたら、町を滅ぼすだろう。それを食い止められるのは、代々死者と会話が出来る者だけなのだ。そしてノーマンこそがその役目を担うべきなのだ!、と。


ロアルド・ダールの児童文学を人形アニメで映画化した『コララインとボタンの魔女 3D』と同じく、ライカ・プロによる長編人形アニメ3D映画です。1コマ撮影するごとに数ミリ人形を動かし、顔面は表情を変える為にリプレイスし…といった作業を延々繰り返す、気の遠くなる作業が必要な、そしてまさに職人芸が要求される手法でもあります。でもモデルアニメーターは小学生の時に憧れていた職業の1つでもあるので、個人的に未だ興味のある技術なのですよね。もちろん、CGで補完したり、3D映画になっていたりで、技術的にはアップデートされているものの、カクカクとした動きが醸し出す温もりは、CG映画とはまた違った味わいがあるのです。


かように映像も素晴らしいのですが、ホラー映画の定番プロットを用いながらもそこかしこでひっくり返す脚本が面白い。原作無しのオリジナル脚本は、芸が細かいのは人形アニメだけではなく、展開、ギャグ、ホラー映画ネタも、でした。予備知識なく普通に観ても楽しめる映画ですが、往年のホラー映画を見慣れた者ならばより楽しめます。作者達は明らかにホラー映画、怪奇映画が大好きで、そういったジャンルへの愛情もたっぷり込められていました。同時にそれは異形の者たちへの愛情でもあります。ゾンビやノーマンといった者たちへの温かな目線だからこそ、劇中では異形の者が世界を救えるのです。ジョン・ブライオンの音楽もホラー映画をモチーフにした感じで面白いものとなっています。


終盤に用意されているテーマも力強い。負の連鎖は自分で止めるんだというメッセージは、最近ハリウッド映画でちらほらと見掛けます。これは戦争大国アメリカでも、忸怩たる想いを抱く映画人が多い証しでしょう。


字幕版だったので知っている役者達の声も楽しめました。コストの問題でしょうか、日本語吹き替え版は上映されていないようです。ジョン・グッドマン、売れっ子ですね。毎月見掛けている気分ですよ。悪ガキ役クリストファー・ミンツ・プラッセ、姉役アナ・ケンドリック、親友の兄貴役ケイシー・アフレック。彼らにも笑わせてもらいました。で、ホラー系、ファンタジー系映画のちょい不気味少女役が多いジョデル・フェルランドは、やはりああいう役か、とか。


機会があったら是非、ご覧あれ。これはお勧めの映画です。


パラノーマン ブライス・ホローの謎
ParaNorman

  • 2012年|アメリカ|カラー|92分|画面比:2.35:1
  • 映倫:G
  • MPAA (USA): Rated PG for scary action and images, thematic elements, some rude humor and language.
  • 劇場公開日:2013.3.29.
  • 鑑賞日:2013.3.29.
  • 劇場:TOHOシネマズ ららぽーと横浜5/公開初日の土曜21時からの回は私を入れて10人強の入り。
  • 公式サイト:http://paranorman.jp/ 予告編、作品情報等。「予告編」にはメイキング映像もあるので必見。