キャビン



★film rating: B+
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

5人の大学生の男女(クリステン・コノリークリス・ヘムズワースら)が、人里離れた森の中のコテージに休暇にやって来た。うかれて騒ぐ彼らだったが、やがて地下室で見つけた古い日記がきっかけとなり、怪異が彼らを襲う。一方、地下の厳重な施設には彼らを監視する男女(リチャード・ジェンキンスら)が大勢居た。彼らの目的は一体何なのか?


森の中の山小屋で若者達が何者かに襲われるスプラッター・ホラー映画など、掃いて捨てるくらいにあります。特に本作が意識しているのはサム・ライミの怪作『死霊のはらわた』でしょう。しかし…結論から言いましょう。『キャビン』は予想を遥か彼方どころか想像もしなかった方向に行き過ぎの、大爆笑超バカ映画のケッ作です。いやホント、よくこんな話を考えたもんだと感心しました。監督ドリュー・ゴダード&製作ジョス・ウェドンの脚本家コンビは、ワイワイ楽しみながら書いたのかな。本当によくもまぁ、こんな与太話を考え付いたものです。


ホラー映画としてのフォーマットに則り過ぎなのは意図的なものなのですが、同時にそうではないよ、というネタも冒頭から小出しにはしています。それが地下施設の男達でもあるのですが、さぁて本作についてはどこまで書けば良いのか非常に難しい映画でもあります。1つ言っておくと日本公式サイト、日本版予告編、それに出来れば日本版ポスター及びチラシは見ない方が良いです。特に日本版予告編はネタバレなんてものじゃありません。映画鑑賞後に自宅で「話題の」予告編を観たらビックリしました。これ、ホントに酷いです。想像を遥かに超える点では映画本編と共通しているものの、ここまでネタバレする予告編も『ダブル・ジョパディー』以来じゃないでしょうか。いや、あれ以上に罪が重いよ。全部言っているじゃないですか。配給会社のクロックワークスは、一体何考えて宣伝してるの?神経を疑いますよ。『キャビン』の予告を先に観てからの映画本編の鑑賞は、予告通りの内容かどうかの確認作業にしかなりません。客は映画を確認しに行くんじゃないんですよ。それ以上のものを求めているんですよ。ただお金取れば良いってもんじゃないでしょ。こういう宣伝方針を決定したクロックワークスは恥を知れと言いたいです。


閑話休題


ドリュー・ゴダードの演出は、怖くないのがホラー映画としては物凄く残念です。但し大ネタ小ネタ大盤振る舞いの内容を、1時間半というコンパクトな時間に収めた無駄の無いまとめ上げは誉めたい。恐怖と嘲笑と血みどろをぎゅうぎゅう押し込んだ剛腕ぶりは注目しましょう。終盤の血みどろ場面、劇場では笑いが起きていましたよ。ですが、やはり本作での最大の功績はジョス・ウェドンとの脚本です。各素材は既にある見知ったものばかりですが、それを如何にくっつけるのかが現代の脚本家ならではの腕の見せ所。その点においては、超強力な接着剤であの素材とこの素材をそうくっつけるのか、と唖然茫然大爆笑ものでした。しかもちゃんとジャンルへの理解と愛情があった上、なのが素晴らしい。こういうマニアックで、且つそれが一般的な娯楽へと昇華されているのは、中々出来ないですよ。と、こう書いてきて、クエンティン・タランティーノを思い出しました。全く手法は別ですが、パッチワークの上手さは共通しているものがありますね。


こういうバカ映画は滅多に観られるものではありません。好事家は是非に。


キャビン
The Cabin in the Woods

  • 2011年|アメリカ|カラー|95分|画面比:2.35:1
  • 映倫:R15+(劇画的で現実離れしているが、刺激の強い殺傷・出血・肉体損壊の数々とマリファナ吸飲の描写がみられ、標記区分に指定します。)
  • MPAA (USA): Rated R for strong bloody horror violence and gore, language, drug use and some sexuality/nudity.
  • 劇場公開日:2013.3.9.
  • 鑑賞日:2013.3.9.
  • 劇場:TOHOシネマズ ららぽーと横浜5/公開初日の土曜21時5分からの回、126席の劇場は6割の入り。
  • 公式サイト:http://cabin-movie.jp/ ネタバレ最悪なサイトなので、出来れば事前には観ないように!!