ジャッジ・ドレッド



★film rating: A-
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

近未来。核戦争後のアメリカは荒廃し、ニューヨークからボストンにかけての都市部は、暴力と犯罪が渦巻くメガ・シティと呼ばれていた。街の秩序を維持するのがジャッジ達。彼らは逮捕した犯罪者をその場で判決、刑の執行を行う事が出来る超エリート集団なのだ。凄腕のジャッジ・ドレッドカール・アーバン)は、ある日新人カサンドラオリヴィア・サールビー)の実地教育係に任命される。各種テストでは落第した彼女だが、強力な読心術を持つサイキックなので、見どころはある。その最終見極めをこの1日でしてもらいたい、というのだ。早速事件の捜査に赴いた2人は、犯罪集団の首領であるママ(レナ・ヘディ)が君臨する200階建て高層マンションに閉じ込められてしまう。ビルには武装した敵だらけだ。絶体絶命の状況下で、ジャッジ・ドレッドカサンドラ対ママ率いる犯罪集団の激闘の火蓋が切って落とされた。


アメコミ映画…ではなく、イギリスの人気コミック2度目の映画化です。前のシルヴェスター・スタローン主演版は観ていないのですが、あちらは原作と違ってドレッドがマスクを取って素顔を晒すのが、まず原作ファンの怒りを買っていたようです。本作におけるドレッド役カール・アーバンは、最後まで口元だけの演技で、しかもカッコ良い。皮肉な決め台詞も含めて、明らかにクリント・イーストウッドの、しかも『ダーティハリー』のイメージを重ねています。それに応えられるアーバンも中々でした。


周りが敵だらけの高層ビル内に閉じ込められた警官たち、というそっくりな設定では、インドネシアの格闘アクション映画『ザ・レイド』もありました。しかしこちらも同工異曲としても凄く面白い映画でした。単純な設定に直線的な語り口がマッチしています。脚本はアレックス・ガーランド。随分と思い切った切り口と内容でした。作品の設定は冒頭のナレーションでささと済ませ、即、ドレッドによる凶悪犯追跡から刑の執行の様子に飛び込むテンポの良さ。『バンテージ・ポイント』のピート・トラヴィスによる演出も、手際良いだけでなく辣腕で、全体を90分ちょっとに収めたコンパクト設計。無駄を極力排除したアクション映画になっていました。低予算故控え目な、各SF的設定も効果的に使われていましたし、新人カサンドラが読心術に長けたサイキックというのも面白い。大体にしてヘルメット集団のジャッジ達の筈なのに、何故彼女がヘルメットを被らないかという設定も面白い。いや大した話じゃないように思えますが、SFには見た目麗しさも必要という観点からすると、これはちょっとしたアイディア賞ものです。ヴェテラン&新人コンビがいきなり極限状況に放り込まれる緊張感もあり、新人が成長して頼もしくなるプロットも生きています。全編、殆どアクション&サスペンスだけの映画なので最大限に刈り込まれたとは言え、人物描写や設定も一貫しているので、活劇に集中して観ていられました。


感心したのは3Dを使う必然性です。時間が引き伸ばされる幻覚作用のある麻薬スローモーというのが出て来て、この超スローモーション映像と3Dの相性がとても良いのでした。この映画、2D上映では面白さがかなり減退するのではないでしょうか。


全編に渡って超暴力的、残酷な描写も多いので、そういうのが苦手な向きにはお勧め出来ません。でもそんなの気にしないという観客には、楽しい1時間半の活劇タイムを提供してくれます。お勧めのSFアクション映画です。



ジャッジ・ドレッド
Dredd

  • 2012年|アメリカ、イギリス、インド|カラー|95分|画面比:2.35:1|3D撮影/上映作品
  • 映倫:R15+(刺激の強い殺傷、鮮血飛散を伴う肉体損壊及びドラッグ吸飲の描写がみられ、標記区分に指定します。)
  • MPAA (USA): Rated R for strong bloody violence, language, drug use and some sexual content.
  • 劇場公開日:2013.2.16.
  • 鑑賞日:2013.2.16.
  • 劇場:渋谷TOEI/公開初日の土曜17時10分からの回は30人弱の入り。客層は男女カップル1組の女性1人のみという、素晴らしい男性率の高さ。7人ばかり白人男性客が来ていて、皆さん、コミック・ファンなのかしらん。それともSF映画好きなのかしらん。3Dはドルビー方式だった。
  • 公式サイト:http://www.judge-dredd.jp/ 予告編、映画情報、山下真司&照英の応援動画等。