ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日



★film rating: A-
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

16歳のインド人青年パイ(スラージ・シャルマ)は、乗っていた貨物船の難破で家族全員を失う。救命ボートで乗り合わせたのは、1頭のベンガルトラ。空腹で飢えたトラと乗り合わせるとは…。文字通り絶体絶命のピンチを、パイは知恵と勇気を振り絞って乗り切ろうとするが。


文字通り素晴らしい映像体験でした。冒頭からラストまでこれだけ3D感が持続するのも珍しい。ヤン・マーテルの原作は未読ですし、内容も青年がトラと救命ボートで一緒になるという事しか知らなかったのですが、これは単純なプロットを如何に物語るかの手本でした。アン・リーは元々好きな監督です。『いつか晴れた日に』『グリーン・デスティニー』『ブロークバック・マウンテン』等、その丁寧な語り部としての資質と、『ハルク』で得たVFX監督体験(あの映画は失敗作の烙印を押されていますが)が融合しており、成功しています。クラウディオ・ミランダの撮影も現実的場面も含めて良かったのですが、全編に渡って使われているVFXが物語を語る為に奉仕していました。いや全く、映像は美麗そのもの。3Dも含めた設計が素晴らしい。これは3Dも含めての映像体験。自宅での2D鑑賞では魅力が減退する映画です。


映画の前半では、パイの生い立ちがかなり丁寧に描写されます。ですから中盤以降の危機また危機を乗り越える様も、説得力があったのですね。単純な偶然や奇跡ではなく、一応論理的に危機を乗り越えるようになっているものの(無論、現実にはそんなに上手く行かないのでしょうが)、ちゃんと観客に納得させようという語り部達の姿勢も素晴らしい。そもそもこの物語は、壮大なホラなのか、はたまた事実なのか。その意味で終盤に衝撃的な展開を用意していますが、その曖昧さも含めて、物語を物語る事の素晴らしさ、あるいは語り部が物語を物語る覚悟といったものが、映画のテーマだったのではないか、と解釈しました。また、映画の半分以上が救命ボートの中で進行するという、小ぢんまりとした舞台設定でありながら、尚且つ壮大でもある世界観という矛盾が楽しい映画でもありました。


これは是非、劇場で、3Dで、出来ればIMAX 3Dで観てもらいたい映画です。3Dのみならず、文字通り画角まで使いこなしていてびっくりしました。凄かったなぁ。映画は映像体験であるという点において、とても映画らしい映画でした。今回はIMAXで観なかった事を後悔してしまいました。


ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日
Life of Pi

  • 2012年|アメリカ、台湾|カラー|157分|画面比:1.85:1|3D撮影/上映作品
  • 映倫:G
  • MPAA (USA): Rated PG for emotional thematic content throughout, and some scary action sequences and peril.
  • 劇場公開日:2013.1.26.
  • 鑑賞日:2013.1.25.
  • 劇場:TOHOシネマズ ららぽーと横浜1/公開2日目の土曜21時00分からの回、309席の劇場は5割の入り。
  • 公式サイト:http://www.foxmovies.jp/lifeofpi/ 予告編、映画紹介、ジェームズ・キャメロンの動画(映画の3Dシステムはキャメロンの会社の機材を使っているのと、彼が3D普及に力入れているから)等。