マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙



★film rating: B-
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

孤独な晩年を送る元首相のマーガレット・サッチャーメリル・ストリープ)は、既に他界した夫デニス(ジム・ブロードベント)を相手にお喋りする事もしばしば。若い頃、市長だった父の影響で政治家を志すようになった彼女は、下院議員選挙に立候補するも落選してしまう。失意の底に居た彼女を励ましたのは、青年実業家のデニス・サッチャーだった。やがて2人は結婚し、2人の子供にも恵まれるが、マーガレットの政界への意欲は失われず、とうとう下院議員に当選する。完全なる男性社会だった政界で、知恵と鋭い舌鋒で足場を築いていくのであった。


アルツハイマーとなったサッチャー老年期を主軸に、回想場面を入り混ぜて彼女の半生を描くドラマです。フィリダ・ロイド監督は前作『マンマ・ミーア!』も楽しめこそすれ出来は感心しなかったのですが、残念ながら今回も同様。優秀(らしい)舞台監督が映画では同様の手腕を発揮するとは限らないようです。若き日の苦労した筈のエピソードも、各選挙も、政界からの退場も、とにかくこちらの感情面が盛り上がらない。不要にがなり立てないのは好感が持てますが、淡々としているスタイルであっても、そこから何かが浮かび上がらなくてはならない筈の映画なのに。よって終幕の陳腐なメロドラマ展開が唐突に感じられて、観ていて白けてしまいました。大げさに描く必要は無くとも、そこまで何らかの方法で心の琴線に触れてもらいたかった。どうしてこんな事になったのでしょうか。


メリル・ストリープは流石に上手いけど、少なくとも私の想像以上、もしくは想像外のサッチャー像ではありませんでした。よって感心こそすれ驚きはありません。ドラマも演技も想像内の範疇だと、観ていて安心するだけで、映画としての面白さには繋がらないのです。凡庸な映画、想像力に欠けた映画だと思いました。夫デニス役の若き日を演じたハリー・ロイドと、老境を演じたジム・ブロードベント。それぞれ魅力的でした。『007』の新作『スカイフォール』が控えていたトーマス・ニューマンの音楽は、文字通り控え目に鳴っていました。


マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙
The Iron Lady

  • 2011年 / イギリス / カラー / 105分 / 画面比:2.35:1
  • 映倫(日本):G
  • MPAA(USA):Rated PG-13 for some violent images and brief nudity.
  • 劇場公開日:2012.3.16.
  • 鑑賞日時:2012.3.20.
  • 劇場:TOHOシネマズ ららぽーと横浜6/デジタル上映。TOHOシネマズ・デイで一人1.300円だったからか、13時25分からの回、205席の劇場は4割程度とそこそこの入り。但し客層の年齢はかなり高めで、私が若手に入るくらいだった。
  • 公式サイト:http://ironlady.gaga.ne.jp/ 予告編、映画情報、コメント集等。