フランケンウィニー



★film rating: B
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

科学が大好きな孤独な少年ヴィクター・フランケンシュタイン(声:チャーリー・ターハン)は、愛犬スパーキーだけが唯一の親友だった。ある日、スパーキーは車に轢かれて呆気無く死んでしまう。悲嘆の底に沈むヴィクターは、新しく来た科学の先生(声:マーティン・ランドー)の授業で、カエルの死体に電流を流すと脚が痙攣するのにヒントを得、スパーキーを蘇らせるのだが。


ティム・バートンの新作人形アニメーション映画『フランケンウィニー』は、バートンがディズニー時代の1984年に監督した同名の短編白黒実写映画を、長編白黒3D人形アニメ映画として再映画化したものです。オリジナル短編は30分程の小品でしたが、そちらを知っているとびっくら仰天の後半…いや、知っていなくともびっくら仰天の展開が、この長編版には待ち受けています。それまでの科学云々は何だったのか、という豹変振りなのですね、これが。しかし、そうか、コレをやりたかったのね、ティム・バートンは…という暴走振りが可笑しいのです。


そもそも今のご時世に白黒で、しかも3Dの人形アニメ映画を撮ろうという感性がバートンらしいですいし、全編に渡っての怪奇映画ネタのくすぐりも楽しい。映画としてのバランスは明らかにぶっ壊れていますし、全然傑作とか思いません。が、ここ最近の『アリス・イン・ワンダーランド』(2010)や『ダーク・シャドウ』(2012)等と比べると、私は断然こちらが好きです。これはこれで楽しい映画体験でした。


人形アニメ映画としては非常に高度な技術が多用されており、これは見ものとなっています。ドイツ表現主義的な影を強調した凝った映像もあって、視覚面でも非常に楽しめる映画でした。一方、いわゆる「普通の映画」ばかり見ている人にとっては、何かこりゃ、という怪作になってはいるとも言えます。


キャストではマーティン・ランドーの深みのある声も笑い所聴き所です。勝手にクリストファー・リーが出ているものだと思っていたので、彼をどうやって出すのかと興味シンシンでしたが、まさかああいう方法でしたか。ヴィクターのは母役キャサリン・オハラ、父役マーティン・ショートも相当に久々でした。オハラはバートン製作の傑作人形アニメ『ナイトメアー・ボフォア・クリスマス』のヒロイン、サリー役も良かったですよね。おっと忘れちゃいけないのが、かつてのバートン映画のヒロイン、ウィノナ・ライダー。彼女も隣の女の子役を演じています。


この映画で顕著なのは両親の存在です。過去のバートン作品ならば、家庭があっても孤独感を癒さない存在だった筈の両親が、ここでは温かみのある存在として描かれています。孤独でも才能に理解を示す母。もっとスポーツとかしてもらいたいと、理解は出来なくとも自分なりに愛情表現をする父。彼らはヴィクター少年にとって、帰るべき家の中心にいる存在なのです。近年のバートン映画は、特に『ビッグ・フィッシュ』(2003)以降は家庭が肯定的に描かれるようになってきましたが、特に本作はそれが明らかになっています。これを作家の成熟と見るか、それとも個性の減退という点で後退と見るか、意見は分かれましょう。私自身は、今後バートンがどのように個性を生かしつつ家庭を描いていくのか、注目したいと思っています。


それにしてもスパーキー、可愛い過ぎるぞ!


フランケンウィニー
Frankenweenie

  • 2012年 / アメリカ / カラー / 89分 / 画面比:1.85:1 / 2D撮影/3D変換映画
  • 映倫(日本):G
  • MPAA(USA):Rated PG for thematic elements, scary images and action.
  • 劇場公開日:2012.12.15.
  • 鑑賞日時:2012.12.22.
  • 劇場:TOHOシネマズ ららぽーと横浜5/デジタル3D上映。公開2週目の土曜23時25分からのミッドナイトショウ、観客は10人程度の入り、内4人程が女性(カップルばかりだっけど)。
  • 公式サイト:http://www.disney.co.jp/movies/frankenweenie/ 予告編、木村カエラからのビデオメッセージ、作品情報、ゲーム2種、おめんや迷路等の紙出力して遊ぶ画像データ等、ディズニーらしい。