フライトナイト/恐怖の夜



★film rating: C+
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

ラスヴェガス郊外の住宅地に住む高校生のチャーリー(アントン・イェルチン)は、母ジェーン(トニ・コレット)と2人暮らし。ガールフレンドのエイミー(イモージェン・プーツ)も居て、楽しい日々を送っていた。そんな中、新たな隣人ジェリー(コリン・ファレル)はナイスガイで、ジェーンはちょっと気になっている様子。ある日、最近疎遠気味だった幼馴染のエドクリストファー・ミンツ=プラッセ)が、ジェリーは吸血鬼だ、彼が越してから次々と同級生が一家ごと失踪していると言い出すが、チャーリーは取り合わない。が、やがてエドも姿を消してしまう。ジェリーの挙動の不審なものを感じ始めたチャーリーは、ジェリーが本物の吸血鬼ではないかと疑い出す。


新たな隣人が吸血鬼だったと知ったティーンエイジャーを主人公にしたホラー映画。そう、題名からお判りの通り、1985年のトム・ホランド脚本&監督のホラー・コメディ『フライトナイト』のリメイクなのです。本昨にはホランド自身が製作総指揮として参加しています。ホランドは本作よりも『チャイルド・プレイ』(1988)の方が有名ですね。あちらはチャッキーを主人公にしたシリーズが数本作られたくらいでしたが、どちらかと言うと『フライトナイト』の方が好きです。どちらもタイトでテンポが良く、適度にユーモアを散らしながら盛り上げる手腕が中々だったと記憶しています。このリメイク版には作者自身が参加しているとあって少々期待していたのですが、残念ながら1985年版にあった青春映画としての可笑しさはまるで無く、只々派手な3Dホラーであろうとした作品…の割りに怖くなかったのでした。


派手にスケールアップしているのは分かります。特に上映時間の後半をまるまる吸血鬼との戦いに費やしているのに、どうにも画面に引き込まれなかったのでした。主人公にまるで感情移入出来なかったのは、序盤での人物描写がいささか乱暴に感じられたからでしょう。監督のクレイグ・ギレスピーはドラマ作品で注目された作品なのに、ホラーは勝手が違ったのでしょうか。反面、吸血鬼役コリン・ファレルは無邪気な笑顔が収穫。オリジナル版のクリス・サランドンの色気は無いけれど、是非はともかくセクシュアルな要素を殆ど削除した本作には合っているとは思いました。


オリジナル版は孤独とか不安とか笑いとかが盛り込まれ、人間味があるというか、ある種生々しさがありました。一方、こちらは徹頭徹尾分かり易く派手でドライ。割り切ったホラーという作りで、要所で先端恐怖症的3D効果も含めて、成る程分かり易いのです。1980年代の映画の作りと、21世紀の映画作りの違いを表しているようで興味深い。思えば(1970年代の映画だけど)『悪魔のいけにえ』(1974)も21世紀に『テキサス・チェーンソー』(2003)としてリメイクされると、黒い笑いも削除され、ひたすら残酷ホラー路線になってしまっていました。本作の場合は、原典のユーモアまで真似する必要は無いかも知れません。それでも笑いは恐怖が際立つコントラストとして、あった方が良い。奥行き重視の3D映画が多い中、先端恐怖症的なショットが散りばめられていて、見世物としてはそう悪くはないのですが。またこのリメイク版、オリジナル版ではロディ・マクドウォールが快演していたヴァンパイア・ハンターの設定も含めて、大幅に改編されています。これもユーモアの削除に繋がっています。要所要所の改変が映画としての面白さには昇華し切れていないのが歯痒い。トム・ホランド本人はこんな作りで納得しているのだろうか、甚だ疑問です。クリス・サランドンがちょい役で登場して楽しませますが、それだけです。率直に言って、本作は1985年の映画の設定だけ借りたまるで別物でした。もっとも、オリジナル版も劇場で観て20数年も経っているし、その後TVで1度観たきりだから、僕の記憶の中で美化されてる可能性はあるとは思いますが。


ガールフレンド役イモージェン・プーツは、メイクもあって『ツイン・ピークス』(1990-1991)のメッチェン・アミックとか、『橋の上の貴婦人』(1991)のサスキア・リーヴスとか思い出させました。プーツ嬢は英国人で、どこかで観た顔だと思ったら『28週後...』(2007)の少女が成長した姿だったのでした。アントン・イェルチンはロシア出身、ファレルはアイルランドトニ・コレットはオーストラリア…と、主要キャストの殆どが外国人の、でもアメリカのティーンを主人公にした映画でもあるというのは、興味深いです。


映倫ではG…つまり誰でも観られるこの映画、人体破壊描写もそこそこあって、毎度の事ながら基準がさっぱり分かりません。一体どういう仕組みで審査しているのやら。その人体破壊や流血を担当したKNBエフェクト・グループは、相変わらず良い仕事をしていたと思います。デザイナーの名前は見逃したのですが、タイトル・デザインも優れていました。


フライトナイト/恐怖の夜
Fright Night

  • 2011年|アメリカ、インド|カラー|106分|画面比:1.85:1
  • 映倫(日本):G
  • MPAA(USA):Rated R for bloody horror violence, and language including some sexual references.
  • 劇場公開日:2012.1.7.
  • 鑑賞日時:2012.1.8.
  • 劇場:ワーナーマイカルシネマズ港北6/3D上映(Real D方式)版の鑑賞(2D版もあり)。公開2日目の日曜11時30分からの回は、10人ほどの入り。
  • パンフレットは600円。オリジナル版への言及も多いが、比較論がもっと欲しい。
  • 公式サイト:http://disney-studio.jp/movies/frightnight/ 予告編、キャスト&スタッフ紹介、オードリーを起用しての宣伝活動等。