ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い


★film rating: A-
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

自分の結婚式の2日前、ダグ(ジャスティン・バーサ)は親友のフィル(ブラッドリー・クーパー)、ステュ(エド・ヘルムズ)、義弟のアラン(ザック・ガリフィアナキス)の3人とバチェラー・パーティを開くべく、ラスヴェガスを訪れる。一夜明け、ひどい頭痛にさいなまれて男どもが目を覚ますと、乱痴気騒ぎの跡が残る高級スイートは破壊され、ステュの前歯は1本失われており、トイレには虎がいて、おまけに誰の子か分からない赤ん坊がいた。さらには新郎ダグの姿まで消えている。記憶はまるで無い。一体何が起きたのか。残された3人は翌日に結婚式を控えたダグを探し出すべく、事の真相を突き止めようと証拠をたぐって行くが。


北米では高評価、大ヒットしたにも関わらず、スターが出演していないコメディ映画とあって、あわやオクラ入りのDVD/Blu-ray Discスルーで発売日まで決まっていた作品です。しかしネットでの公開嘆願署名活動とゴールデングローブ賞作品賞候補となったことから、規模は小さいとは言え劇場公開が決まったのは素直に喜びたいものです。こういうコメディ映画は大勢の観客と共に大笑いしたいものですが、朝いちの回ということもあってか、僕も入れて観客は30人程度とは少々残念。都心ではほぼ満席だったという情報もありますから、大笑いしたいのであればそちらまで出向くのが宜しいかと思われます。


さてこの映画、少しずつ解き明かされていく謎解きをメインに据えたプロットが面白い。これは、ジョン・ルーカスとスコット・ムーアの脚本が、がっちりとした土台として出来上がっているからです。但し真相の数々は意外性が乏しいのが勿体無い。それでもお下劣で大笑い、きちんとした構成のコメディになっています。コメディとミステリの相性が良いのは、笑いとスリルの相性が良いのと同様。監督トッド・フィリップスの演出は所々凝った映像を見せてくれるものの、物語や人物を語ることを基本とし、全体には手堅いものでした。逆にもっと弾けても良いのではないかと思わせる箇所もありますが、タイミング良く笑わせてくれる場面が多いので楽しめます。


気になる展開で観客の興味を持たせ、謎解きが出来る知性を持ちながら、基本的に大人に成り切れないバカな男たちを描いているのがこの映画。主人公の3人の男たちの描き分けも明確です。ブラッドリー・クーパー演ずる、ハンサムな教師で「結婚は地獄だ」と言い放つフィルは、悪ふざけも好きなリーダー格。2枚目なのに結構痛い目にも遭い、余り格好付けていない役どころなのが好ましい。同居している彼女との婚約を考えている歯科医ステュは、将来は恐妻家間違い無しの情けない役どころ。エド・ヘルムズは差し歯を実際に抜いての大熱演です。どこかピントがずれているヒゲデブのアランが1番美味しい役でした。ザック・ガリフィアナキスは身体の動きも表情も豊かで、将来有望なコメディアンとして注目したい存在です。妙な間と身体の動き。終盤の自信満々な表情で、身体の前で手を重ねてエスカレータを下りて来る姿の可笑しさ。


「黄金の心を持つ娼婦」という、男に都合の良い、よくあるパターンの女性を演じているのがヘザー・グレアムタイプキャストでありながらも許せてしまうのは、映画自体が子供じみた大人の映画そのものだからでしょう。グレアム自身はマジメかつ大胆にさらっと演じていて、やはりこの人はコメディ向きだと思いました。

この映画がお下劣であっても嫌味が無いのは、基本的に男の友情映画となっているからでしょう。その点がしっかり描けているのが好感が持てました。


ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い
The Hangover

  • 2009年 / アメリカ、ドイツ / カラー / 100分 / 画面比:2.35:1
  • 映倫(日本):R15+
  • MPAA(USA):Rated R for pervasive language, sexual content including nudity, and some drug material.
  • 劇場公開日:2009.7.3.
  • 鑑賞日時:2009.7.3.
  • 劇場:横浜ブルク13 シアター6/ドルビーデジタルでの上映。公開初日の土曜9時40分からの回、244席の劇場は30人程度の入り。
  • 公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/thehangover/ 予告編、有名人からのコメント、上映劇場、ニュースなど。今週末11日(日)に渋谷に映画評論家・町山智浩トークショーもあるとの告知あり。