パラノーマル・アクティビティ



★film rating: B-
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

学生のケイティ(ケイティー・フェザーストン)とデイトレーダーのミカ(ミカ・スロート)の若いカップルは、新居の一戸建てで深夜に鳴り響く異音に悩まされていた。ミカの提案により、寝室にカメラを設置して、2人が寝静まってから何が起きているのかを記録することになる。果たしてカメラに映っていたのものは。本作はその記録をまとめたものである。


客層の9割がいわゆる学生(小学校から高校まで)で占められるという、かなり異色の環境で観ました。映画が始まる前に劇場内が暗くなると、それだけで「怖いー」という声がちらほら。無論、恐怖場面になると、一際声が大きくなります。そのような雰囲気で楽しむにはうってつけの映画でした。


既にあちこちで言われているように、本作は『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(1999)のようなモキュメンタリ風ホラー映画、つまりドキュメンタリを模したホラー映画です。モキュメンタリとして徹底しているのが、映画のタイトルはおろかクレジットの類が一切出ないこと。ラストに権利関係の細かい文字がびっしり並んだクレジットが1枚出るのみですが、あれすら本物なのかどうか。手持ちぐらぐらキャメラと、寝室に設置キャメラの映像のみで構成されています。


台詞のある登場人物は、ケイティとミカの20代カップル、そして友人1人と霊媒師のみ。他には殆ど誰も登場せず、物語も家の敷地内のみで展開されます。人物を如何にして在宅状態にするかと思っていたら(もちろん外出はときたましているのですが、場面としては登場しません)、ケイティは学生、ミカはデイトレーダーと設定されていました。ケイティは幼少時から心霊現象に悩まされており、オカルトの類を信じています。一方、ミカはデイトレーダーということもあって、そんなことを本気にしない合理主義者。また普段から独力で稼いでいるからでしょう、全て自力で解決しようとして事態を悪化させます。根拠無き自信は若さゆえの愚かさに見えますが、マチズモに染まったアメリカ人の典型的男性とも受け取れます。そんなことを考えながら観ていたら、脚本&監督のオーレン・ペリは、19歳のときにイスラエルから移住して来たとか。ミカはペリの目に映ったアメリカ人男性像の典型なのかも知れません。また、主役を演じる俳優2人の自然な演技もあって、愚かさだけではなく、彼らの緊張や焦燥も伝わって来ました。向こうには全くの無名でも演技の上手い人たちがいるものです。


この映画の特徴は、恐怖場面の多くが固定キャメラで捉えられている点にあります。普通、ホラー映画は動くキャメラと編集で恐怖を醸成します。しかしこの映画では、カップルが寝付いた寝室に設置されたキャメラに何かが映る…もしくは映らないことによって、緊張と恐怖が高まるようになっています。観客は安全が保障された劇場の座席に座り、静止したキャメラと静かな環境ノイズに身を置くことによって、恐怖を期待し、身構えて待つのです。映画の製作者と観客との共同作業による恐怖と、その成果による劇場内の黄色い声の数々が、映画を楽しませてくれました。


幾つかのぞっとする場面はあるものの、映画としては単調に感じられるのも確かです。映画の構成は、日中の対策・準備、深夜の怪異、朝の検証、準備、恐怖…これの繰り返しです。深夜は必ず寝室の固定キャメラ映像になるとあって、ミニマリズムが特徴となっているのです。私自身、いささかの退屈と恐怖に繰り返し襲われるといった按配でした。しかも体調不良気味の状態でぐらぐら映像を浴びせさせられたので、後半はいささか気分が悪くなり、早く終わってくれるよう念じていたのも事実。私的には『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(1999)の悪夢再来となりました。それでも最後の30分は怪異がはっきりと顔を出し、衝撃的なラストを迎えます。ここで場内は恐怖も最高潮に達し、ホラー映画を楽しむ幸福な時間を過ごせました。そのラストは、スティーヴン・スピルバーグの助言が取り入れられたものだとか。逆にオリジナル版のラストも観てみたいものです。恐らくはDVD、Blu-ray Discに収録されているのでしょうけれども。


パラノーマル・アクティビティ
Paranormal Activity