2012



★film rating: B-
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

2009年。アメリカ政府の地質学者ヘルムスリー(キウェテル・イジョフォー)は、太陽活動の活発により、2012年に地球が壊滅すると政府に報告する。2012年。売れない作家で今は富豪の運転手をしているジャクソン(ジョン・キューザック)は、ふとしたきっかけで地球が滅亡することを知ってしまう。その事実を隠している各国政府は密かに巨大船を造り、限られた人数のみ脱出させる準備を行っているという。最初は信じなかったジャクソンだが、ロサンジェルスで大規模な地震が発生し、やがて地殻変動は全米へと飛び火していく。別れた妻(アマンダ・ピート)と子供たちを守るため、ジャクソンは彼らと共に船がある地を目指すが。


マヤ暦の内、長期暦が「2012」年で終了していることから生まれた2012年滅亡説。それをマトモに映画化しているのが本作です。エンドクレジットの最後には、グレアム・ハンコック著『神々の指紋』を参考にした旨も表記されます。科学的にはトンデモな内容ではありますが、このところエメリッヒと組んでいる映画音楽作曲家ハラルド・クローサーのアイディアを元に、エメリッヒ&クローサーの2人で脚本を書いています。エメリッヒ作品ですから予想に違わず大味そのもの。ご都合主義で行き当たりばったりな展開は失笑ものですが、常にどかんどかんと大爆発が起き、主人公たちはその都度危機に見舞われるので、時にはハラハラさせられ、退屈はしません。周囲ではばたばた善人たちが命を落としていくのに、どこか牧歌的とさえ言える雰囲気さえあります。これは1970年代のパニック映画に近い作風。但し1970年代パニック映画との違いは、高額な製作費の殆どを特撮に回しているのでオールスターキャストではないこと。演技がきちんと出来る人を中心にした、地味な顔触れになっています。ともあれ、エメリッヒの鷹揚な個性が、壮大な題材にマッチしているのは否めないでしょう。


映画は破壊場面を出し惜しみしません。冒頭からハイテンポ、危機また危機でそれなりにハラハラさせられ、壮大な映像に目が行き、迫力満点のサウンドに圧倒されます。特に前代未聞の壮観な映像のつるべ打ちは凄い。休火山のあるイエローストーン公園大噴火を皮切りに、カリフォルニアは巨大な地割れが発生し、プレートごと持ち上がって破壊されます。エヴェレストよりも高い巨大な津波が押し寄せ、ホワイトハウスは流されて来た航空母艦ごと水に呑み込まれます。とても人が助かるとは思えない数々の壮大な状況を、これでもかと徹底して細密に描かれた最新CG技術を多用したVFX映像は圧巻で、見世物としての劇場用映画の意図は成功していると言えましょう。


映像だけではないぞ、ドラマもたくさんあるぞとばかりに、定番ながらも感情的に盛り上げようとする場面も多く用意されています。しかし長時間の映画にも関わらず、良い映画を観たという納得感・充実感に程遠かったのも事実。登場人物の多くが落命する場面では、火責め、水責め、落下、圧搾とバラエティに富んでいます。中には助かるのかなと思わせ、その後全く登場しなくなる人物も居たりで、中々に容赦無い。鑑賞後に後味悪く感じられるのは、少数者の行動によって大勢が死ぬ羽目になる終盤の展開があるからです。だから登場人物たちの命が助かっても素直に喜べない。ジョン・キューザックアマンダ・ピートオリヴァー・プラットら個人的に好きな役者たちが出ているのに。ここら辺の無神経さは、エメリッヒ作品『デイ・アフター・トゥモロー』(2004)に通じるものがありました。


ウディ・ハレルソンは如何にもな役で笑ってしまいました。本人も楽しかったに違いありません。キウェテル・イジョフォーと、彼と仲良くなってしまう大統領の娘役タンディ・ニュートンは、共にアメリカ人の役なのにイギリス黒人なのも面白い。大統領役ダニー・グローヴァーは貫禄がありました。


『2012』は、観るのならば劇場の大画面で体感すべき、しかし一度観たらもう十分な映画でもあります。


2012
2012

  • 2009年 / アメリカ、カナダ / カラー / 158分 / 画面比:2.35:1
  • 映倫(日本):G
  • MPAA(USA):Rated PG-13 for intense disaster sequences and some language.
  • 劇場公開日:2009.11.21.
  • 鑑賞日時:2009.11.21.
  • 劇場:ワーナーマイカルシネマズ港北1/ドルビーデジタルでの上映。公開初日の土曜17時20分からの回、シネコン最大の539席の劇場は4割程度の入り。
  • 公式サイト:http://www.sonypictures.jp/movies/2012/ 予告編、キャスト&スタッフ紹介、プロダクション・ノート、壁紙ダウンロードなど。