インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国


★film rating: B+
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

米ソ冷戦下の1957年。ソ連情報部のスパルコ少佐(ケイト・ブランシェット)は砂漠の真ん中にある米軍基地を襲撃した。目的は宇宙の神秘を解き明かすクリスタル・スカル。捕虜にしていたインディアナ・ジョーンズ教授(ハリソン・フォード)を強要して巨大な倉庫を捜索させ、スカルを強奪する。隙を見て脱出したインディは大学に戻るが、FBIからは共産主義者と睨まれ、教壇を追われてしまう。そこに一通の手紙を携えたマット(シャイア・ラブーフ)という青年が現れた。インディの知り合いであるオクスリー教授(ジョン・ハート)と、マットの母マリーが謎の一団に捕らえられたというのだ。インディはマットを従え、旧友らを救出に向かうべく冒険の旅に出る。


第3作『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』(1989)から19年振りの続編は、個人的には笑え、楽しめたものの、満席の劇場内の反応は今一つでした。これはシリーズ第1作『レイダース/失われた聖櫃<アーク>』(1981)及び『最後の聖戦』への目配せが多く、それらを知っている、あるいは記憶している前提での笑い所が多かった為ではないでしょうか。特に物語としては『失われた聖櫃』の後日談とでも呼ぶべきエピソードが目立つので、同作が殆ど記憶に無い方には観直すことをお薦めします。恐らくこのシリーズを初めて劇場で観ると思われる世代も多かったですから、さすがに19年間は長かったということなのでしょう。


それでもハリソン・フォードが登場すると余りブランクを感じさせないのは、こちらの思い入れもあってなのか。皮肉っぽい微笑とどこか悪漢めいた雰囲気、ワイルドでいながら子供っぽさも残るインディ。髪に白いものや顔に皺が増えても、彼こそがインディアナ・ジョーンズ教授そのもの。ハン・ソロが登場したとしても、ここまで場の雰囲気が変わるかどうか。それでも寄る年波には勝てないのか、はたまた意図的な世代交代なのか、身体を動かして飛び回る派手なアクションはシャイア・ラブーフに任せています。ラブーフ演ずるマットは『波止場』(1954)のマーロン・ブランドのような井出達で登場し、インディとは違った性格分けも良い対照となっています。ラブーフも活き活きしていて小気味良い。中々良い取り合わせです。


お久しぶりのマリオンことカレン・アレンは、美しく歳を重ねていてびっくり。肝っ玉もそのまんま、今まで以上に活躍してくれるのが嬉しい。悲鳴を上げる場面が多かった以前に比べると、映画における女性の描き方の変化、時代の変化を映し出しているとも言えます。


ケイト・ブランシェットはロシア訛りで悪役を楽しげに演じています。しかし折角のスター起用も、余り描き込まれていない役だったのが勿体無い。危機また危機の冒険アクションが主眼の映画であっても、もう少し性格付けに幅があっても良かった。特に最期はもっと華のある派手な散り際が似つかわしいように思えました。


さて賛否起こるであろう今回の超自然現象ネタです。端的に言って、僕自身はありだと思いました。そもそも冒頭の米軍基地の標識を読めば予想は付くし、ネタも早々に明かし、それなりに観客に心構えを与えていた、というのもあります。但し今回のネタを、このシリーズならではの味わいとは違う、と拒否する向きは理解出来ます。


今回残念だったのは、アクション場面の方向性です。毎回、趣向を凝らしたアクションでスリルと笑いを提供してくれたのが、このシリーズの醍醐味だった筈。そのアクションも荒唐無稽であっても、一応は「ありそうでない」路線でした。しかしデジタル視覚効果の発達もあって、今回は「なさそうでない」アクションも目立ちます。また、映画全体から『レイダース』のようなテンポの良さが失われてしまいました。緩急自在ではなく、やや一本調子な印象さえ受けます。いや、後半はアクションのつるべ打ちなのですが、どうにも歯切れが悪い。結果的にそれなりにスリルはあるものの、手に汗握るほどではない映画になってしまいました。


しかしながらこのシリーズ独特の味わいは捨てがたい。他では味わえないのも確かです。ラストシーンも、このシリーズのファンならば単純に喜ばしく思える人も多いことでしょう。今回は記憶に残る新しい旋律を生み出せなかったジョン・ウィリアムズの音楽だって、『レイダース・マーチ』が流れれば、何となく満足してしまう。この曲を耳にすれば、思わず口ずさみたくなります。我らがヒーローの帰還を祝う気分もあって、せめてあともう1本はインディの活躍を観たいと思わせます。


インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国
Indiana Jones and the Kingdom of the Crystal Skull

  • 2008年 / アメリカ / カラー / 122分 / 画面比2.35:1
  • 映倫(日本):(指定無し)
  • MPAA(USA):Rated PG-13 for adventure violence and scary images.
  • 劇場公開日:2008.6.21.
  • 鑑賞日:2008.6.14./TOHOシネマズ ららぽーと横浜3 DTSでの上映。先行上映、土曜20時50分からの回、401席の劇場は満席。
  • 公式サイト:http://www.indianajones.jp/ 予告編、キャスト&スタッフ紹介など。6月17日現在では余り内容を見られず・・・。