バイオハザードIII


★film rating: B-
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

T-ウィルスの漏洩・蔓延により、殆どの人類は死滅してアンデッド(ゾンビ)となり、荒廃した地上は砂漠化した。T-ウィルスの開発元である巨大企業アンブレラ社は、ウェスカー議長を中心としたアリス計画を始動していた。一方アリス(ミラ・ジョヴォヴィッチ)は、アラスカが安全であると記載したノートを見付け、数十人のコンボイを結成しているカルロス(オデッド・フェール)らと再会する。コンボイのリーダー、クレア(アリ・ラーター)らと共に食料や燃料を補充する為にラスヴェガスへと向かうものの、そこにはアリスを捕らえんとするアンブレラ社アイザック博士(イアン・グレン)の奸計が待ち受けていた。


冒頭の意外な展開は導入部としては申し分無く、中々期待させます。しかしその後のアリス登場からゾンビ犬との闘いは、最近の映画らしく激しく動くショットを細切れに繋いで何が何だか良く分からない映像で、がっかりさせられました。『バイオハザードII アポカリプス』(2004)の悪夢よ再びか、と思わせたのですから。まぁ、それでも全体に比較的安心して観ていられるアクション映画となっているのは、いつの間にやらヴェテラン監督となったラッセル・マルケイが手堅い演出を見せてくれるからでしょう。『ハイランダー/悪魔の戦士』(1986)等、初期ではこれ見よがしの映像美先走り監督だった彼も、すっかり職人となったようです。


映画としての単純な面白さでは、そもそも出来の良くない『II』よりかは上です。しかしながらこのシリーズ、ここに来て毛色が少々変わって来た様子。比較的ゲームに忠実だった前2作に対し、独自のSF路線を取りつつあります。また、今までは主人公らが置かれた状況をクリアしていく形式の映画、つまりゲームのようなプロットでしたが、今回は全体に流れがある普通の映画となっています。


このシリーズですから、ホラーよりもアクションの強い娯楽映画として割り切れば問題ありません。ゾンビがわらわらと出て来るのを大画面で眺める楽しみもあります。集団で走って襲い来る凶悪ゾンビまでが登場するのは、最近の『28日後...』(2002)や『ドーン・オブ・ザ・デッド』(2004)等の流行を取り入れているのでしょう。


脚本は前2作同様のポール・W・S・アンダーソン。元となったゲーム版のマニアということもあって、またSFホラーのマニアともあって、要所にネタを仕込んでいます。しかしながら、ネタを仕込みつつも余り整理されていないような印象を受け、終幕に向かっての全体的な流れが盛り上がらない。しかも演出にケレン味が無くなったのは、職人監督が担当しているからなのでしょうか。1作目のように、アンダーソン自身がメガフォンを取っても良いのでは、と思いました。


人間離れした予想外の能力を発揮したりで、もはやアンダーソン夫人でもある、パワーアップしたアリスことミラ・ジョヴォヴィッチ主演によるSFホラー・アクション・アイドル映画として楽しむべき作品のようです。


これで完結と言われていましたが、まだまだ続きを作りそうな、しかも結構期待させるという意味でも気になるエンディング。これはシリーズでも初の終わり方なので、次回作があるのならば、観てみたいと思わせます。


バイオハザードIII
Resident Evil: Extinction

  • 2007年 / フランス、オーストラリア、ドイツ、イギリス、アメリカ / カラー / 94分 / 画面比2.35:1
  • 映倫(日本):PG-12指定
  • MPAA(USA):Rated R for strong horror violence throughout and some nudity.
  • 劇場公開日:2007.11.3.
  • 鑑賞日:2007.11.3./TOHOシネマズ ららぽーと横浜1 ドルビーデジタル上映での上映。土曜14時30分からの回、309席の劇場は4割程度の入り。
  • 公式サイト:http://www.sonypictures.jp/movies/residentevilextinction/ 予告編、壁紙、プロダクション・ノートなど。アンブレラ社シークレットサイトへのリンクあり。