ダイ・ハード4.0


★film rating: B+
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

全米が瞬く間にサイバーテロを受けた。交通機関は止まり、電力も乗っ取られてしまう。未曾有の事件の鍵を握るのは、自分が護送しているハッカーのファレル(ジャスティン・ロング)だと感付いた刑事ジョン・マクレーンブルース・ウィリス)は、サイバーテロ組織に立ち向かう。


死んでも死なない世界一不運な警官4度目の活躍を描いた『ダイ・ハード4.0』は、12年振りの続編でもあります。妻とは離婚し、大学生となった娘とは上手くいかず、頭は禿げあがってスキンヘッド。自称アナログ人間なのでコンピュータなどにも詳しくない。私生活ではおよそ冴えないマクレーンも、相棒にハッカーの若者を従え、絶対不利の状況でも根性で切り抜けて行くのは変わらず。そういう意味では安心して観られます。


そんなマクレーンの敵として登場するのがサイバーテロリスト。9.11.以降のアメリカで生々しくなく、しかも強力で、現代的な悪役としての登場は、中々工夫されていると言えましょう。謎に包まれているNSA国家安全保障局)も登場させ、現実感と現代性を持たせようという一定の工夫は認められます。しかしながらアナログ人間、言い換えればアナクロ人間のマクレーン対、最新テクノロジーに通じているテロ組織の図式は、思った以上に効果を上げていません。結局はマクレーンが使うのは腕力と銃。これがアナログだというのであればそうなのかも知れませんが、銃器で武装しているのは劇中のテロ組織とて同じこと。設定に満足したのか、こういった細部にまでの細かい神経は行き届いているとは言い難いものがあります。


実は一番緻密な出来栄えを見せてくれるのは冒頭から序盤に掛けて。次々とハッカー達が暗殺されるところから、ジョン・マクレーンが事件に巻き込まれるまでは秀逸です。不穏の陰と緊張、一気呵成のアクションと、『アンダーワールド』シリーズで名を売ったレン・ワイズマンの監督振りも好調。娘のデートとマクレーンという適度なユーモアも交え、これはと期待させます。


けれども映画が進むにつれ、序盤の落ち着いたサスペンスの醸成などどこに消えたのやら、どかんばかんと派手な特撮爆発の連発となります。お陰で幾らブルース・ウィリスが熱演しても、第1作にあった主人公の肉体やユーモア精神といった人間味は薄くなりました。いつもぶつくさこぼしていた愚痴も減ったのも残念。人間味が減った分、スーパー中年刑事となってしまいました。


ワイズマンの演出は小気味良く、最初から最後までびっしりと見せ場で埋め尽くして飽きさせませんが、意外にあっさりしていて、ラストなど溜めとケレンがもう少し欲しいところ。そもそも余りに荒唐無稽な脚本で、あちこち突っ込みを入れたくなります。映画を観ている間に私が思い出したのは、『トゥルーライズ』(1994)でした。シュワ&ジェームズ・キャメロンのコンビによる、超大作アクション・コメディとこの映画の何が似ているかと言うと、最新鋭の特撮を駆使した大掛かりで荒唐無稽なアクションがこれでもかと登場するからです。特に終盤には秘密のヴェールに覆われているF-35まで登場し、まんま『トゥルーライズ』になります。観ている間は面白いけれども、後には何も残らないポップコーン映画として観れば、かなり楽しい映画なのではありますが。


ウィリスとコンビを組むジャスティン・ロングは中々良い感じ。ウィリスと大アクションを繰り広げるマギー・Qは強い印象を残します。この2人に対して、悪玉役ティモシー・オリファントは魅力不足でした。


ダイ・ハード4.0
Live Free or Die Hard (aka: Die Hard 4.0)