スネーク・フライト


★film rating: B+
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

FBI捜査官フリン(サミュエル・L・ジャクソン)は、ギャングによる殺害現場を目撃した証人である若者ショーン(ネイサン・フィリップス)を、ハワイから本国へと護送しようとする。だがギャング側は事態を察知。数千ものヘビをジャンボジェット機内にばらまく。証人を飛行機ごと消そうというのだ。空飛ぶ機内は恐怖の巨大密室となり、修羅場と化す。フリンは客室乗務員のクレア(ジュリアナ・マーグリーズ)らと共に、状況を打開すべく悪戦苦闘する。


今どきこんな時代錯誤な設定を大マジメに映画化するとは、楽しいじゃないですか。タイトル(原題『Snakes on a Plane』=飛行機はヘビでいっぱい)発表時から話題になっていたこと、そして映画会社幹部がタイトルを変更しようとしていたのに、サミュエル・L・ジャクソン兄貴がそれに真っ向反対していたことなどで、一部にて話題になっていた作品です。


1970年代風の設定の映画は、作風も一部1970年代怪奇映画画風。つまりはエログロでスパイスを効かせた作り。しょうもない描写の数々は、この手の映画を見慣れた向き(つまり、僕のような手合い)には喜ばれること請け合いです。おまけに主演は全米一「Mother Fucker」を言うのが上手い兄貴。当然クライマクスでは、ここぞというところで決め台詞を咬ましてくれます。


ここまで書くと、安易な設定に満ちた安直な映画に思われるかも知れません。しかし監督は『デッドコースター』(2003)、『セルラー』(2004)と、次々とホラー/スリラー/アクションの快作を飛ばしているデヴィッド・R・エリスです。観ていないって? それでは『マトリックス リローデッド』(2003)は如何でしょうか。彼こそは、あのハイウェイ・チェイス場面を監督した男なのです。


エリスの演出は、ヘビが暴れ回るまでの序盤はスロー気味。搭乗客の紹介場面など、それこそ70年代パニック映画のようで微苦笑を誘われます。しかし飛行機が高度を上げるにつれて徐々に盛り上げ、ヘビが機内に放たれてからはエンジンが掛かり出します。ホラー映画でお馴染みの「犯人の目線」ならぬ「ヘビの目線」映像も盛り込み、次から次へと乗客がやられて遂に大騒ぎとなる描写まで、手馴れたもの。危機また危機を繰り出し、操縦士が居なくなってさてどうする、という定番の絶体絶命的状況まで描いており、意外にも正攻法のパニック/ホラー/スリラー映画となっています。中盤以降は高空での出来事と、陸上でのFBI&ヘビ専門家ティームとを並行して描き、サスペンスを盛り上げます。こういったがっちりした作劇は注目に値するし、サーヴィス精神を旺盛に発揮しているのは、この手の映画では誠に結構なこと。果ては一体どこに入っていたんだという、人間を丸呑みにする大蛇まで登場させるのも可笑しい。


ヘビに襲われる人にも一応きちんと法則があるようで、劇中では説明されていませんが、後で考えると納得出来るようになっています。脚本や演出は細部はマジメに出来ているのです。最近のハリウッド製大型アクション映画で連発される、実は裏切り者が居た、などという妙に捻った脚本でないのも良い。良いヤツは良いヤツ。悪いヤツは最後まで悪いヤツなのです。


ホラー映画とパニック映画の融合作は、ユーモアを交えながらもこの手の娯楽映画としては中々の出来映え。ラストもすっきり片がつきます。日米共に批評家たちからは好評だったにも関わらずヒットせず、高額な製作費も回収出来なかったようですが、ジャンル映画ファンの記憶に留めるに値するものとなっています。エンドクレジットに流れる主題歌プロモーション・ヴィデオもお楽しみ下さい。


スネーク・フライト
Snakes on a Plane

  • 2006年 / アメリカ / カラー / 105分 / 画面比2.35:1
  • 映倫(日本):PG-12指定
  • MPAA(USA):Rated R for language, a scene of sexuality and drug use, and intense sequences of terror and violence.
  • 劇場公開日:2006.10.28.
  • 鑑賞日:2006.11.23./シネフロント ドルビーデジタル上映での上映。日曜13時45分からの回、245席の渋谷ツタヤ上の劇場は3割程度の入り。すぐそばには小学生の親子連れが居たものの、子供が泣き出したので母子で途中退場。最後まで残って観ていたお父さんのセレクションだった模様。
  • 公式サイト:http://www.movie-eye.com/snake/ スタッフ&キャスト紹介、予告篇、blog、ヘビ紹介など。