テキサス・チェーンソー ビギニング


★film rating: B-
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

1969年。徴兵され、ヴェトナムの戦地に赴くことになった18歳のディーンとその兄エリックは、それぞれのガールフレンド、ベイリーとクリッシーを伴ってテキサス縦断ドライブ旅行に出発する。だがとある田舎町で、4人の男女は予期せぬ足止めを食らうことになる。おぞましい体験として。


名作ホラー『悪魔のいけにえ』(1973)のリメイクである『テキサス・チェーンソー』(2003)の前日談。暴挙とも無謀とも言われたリメイク版が、予想に反してそこそこ好評だった為、昨今のハリウッドで流行っている前日談ものとして作られたのは明白。『バットマン リターンズ』(2005)、『007/カジノ・ロワイヤル』(2006)などと同様に。それはそれとして、変態一家ヒューイットの成り立ちが分かるのは結構なことだ。


人面皮マスクと屠殺用エプロンを身に着けて電動ノコギリを振り回すレザーフェイスの生い立ちが、あっさりとタイトルバックで描かれてしまうのは、やや拍子抜け。その他にも、前半は家族構成やら人肉一家になった経過が分かるのは興味そそられるものの、それからが問題だ。後半になると惨たらしい殺戮ショーとなるだけで、さほど面白くなくなってしまう。やけに気合の入った人体損壊描写は前作以上で、残酷描写が抑え目となった最近のハリウッド映画にしては珍しい。原典である『悪魔のいけにえ』には、直接描写が無くとも理不尽な恐怖と残忍さと迫力があったのに、そこからかけ離れてしまった。これも映画としての退化であろう。オリジナル版の監督&脚本家として映画史に名を留めるトビー・フーパーがプロデューサーとして参加しているが、コンサルタントとして参加していただけで、映画の方向性には口を出せなかったのかな、などと想像してしまう。


映画で最大の問題は、前日談なのだから最後がそれなりに予想出来てしまうこと。それなりに捻りでもあれば良いものの、何の工夫も無い。脚本家たちは念の入った変態一家の描写で満足したのだろう。新しい何かが欲しかったところだ。


映画で一番面白かったのは、相変わらずの傍若無人振りを発揮する一家の長である保安官ホイト。意外な正体も含めて、登場すると場をさらってしまう。今回の真の主人公は彼。演ずるR・リー・アーメイはアドリブ全開で名台詞を連発。言うことがいちいち滅茶苦茶で狂っているのが可笑しい。『フルメタル・ジャケット』(1987)のハートマン教官がホラーに出るとこうなるのだ。こうなってはヒロイン役ジョーダナ・ブリュースターは刺身のツマでしかない。この映画はR・リー・アーメイを観るだけでも十分。その存在感は、お下劣ホラーのパワーの源とさえなっている。


テキサス・チェーンソー ビギニング
The Texas Chainsaw Massacre: The Beginning

  • 2006年 / アメリカ / カラー / 91分 / 画面比1.85:1
  • 映倫(日本):R-15指定
  • MPAA(USA):Rated R for strong horror violence/gore, language and some sexual content.
  • 劇場公開日:2006.11.11.
  • 鑑賞日:2006.11.11./渋谷東急 ドルビーデジタル上映での上映。公開初日の土曜14時30分からの回、300席の劇場は30人程度の入り。
  • 公式サイト:http://www.texaschainsaw.jp/ ブログ、予告篇、壁紙ダウンロード、スタッフ&キャストなど。ページが変わるところで電ノコが血しぶきと共に画面を切り裂くのがニクイ。