パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト


★film rating: B-
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

海賊ジャック・スパロウジョニー・デップ)を逃した罪で捕らえられたウィル・ターナーオーランド・ブルーム)は、ジャックに追いつくことを条件に仮釈放される。東インド貿易会社に都合の良い、ある取引を持ちかけるのだ。ジャックを追いかけるウィルを婚約者エリザベス(キーラ・ナイトレイ)も密かに追う。一方のジャックは、死せる海賊デイヴィ・ジョーンズビル・ナイ)の呪われた契約に戦々恐々としていたのだった。


ディズニー・アトラクションの映画化2作目は、完全に前作の続編となっている。いちげんさんお断りの作風は最近の流行だとしても、前作を劇場公開時に1度観ただけのこちらとしては、事情が飲み込めないところも散見された。が、大勢に影響はない。


それなりに期待していたにも関わらず大した出来でなかった前作があったから、今度の作品はそれなりに楽しめた。豪華なプロダクション・デザイン。美麗な撮影。前編に渡る精緻な特撮。グロテスクな怪物どもの造形。巨大な帆船。それにジョニー・デップ。但し、いわゆる旧き良き「海賊映画」が持っていた爽快感は、ここには無い。この映画の製作者たちはそんなことに興味は無いのだから。ただひたすらのごった煮伝奇映画を物量攻勢で押しまくるのは、製作者ジェリー・ブラッカイマーらしい作りでもある。


ブラッカイマーらしいと言えば、予告編以上のものが無いのが常だが、本作も同様。見せ場は全て予告編にて確認済みだ。


ゴア・ヴァーヴィンスキーの演出は前作同様もたもたして手際が悪く、アクションも笑いも切れとは縁もゆかりも無い代物。最近の大作映画らしい、監督の腕前などどうでも良い映画の典型である。実は『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』(1980)だったのは笑えるとしても、もっと段取りの上手い監督だったら、と死んだ子の歳を数えても仕方が無いか。


前作で売り出したオーランド・ブルームキーラ・ナイトレイも、輝きが感じられなかった。表情と台詞回しの変化が乏しいオーランドは、主役を1人で張るのが難しいのは『キングダム・オブ・ヘブン』(2005)と『エリザベスタウン』(2005)で証明済み。このようなアンサンブル・キャストの準主役程度で直球演技をしていると、何となく持つ。キーラ・ナイトリーは出番や見せ場が増えていても、きちんと描きこまれた役で初めて魅力を発揮するような気がした。要は描きこみ不足の役を説得力を持ってこなせる程に演技が上手い訳ではない、ということなのだろう。


それにしても。


はっきり言えるのは、お子様向きの題材でも、これはお子様向き映画ではないということ。必要以上にプロットがごたごた混乱した脚本。2時間半もある上映時間。生き残った船乗りたちを手斧で皆殺しにする後味悪い場面など。これらは稚気とは呼びがたい。


頻繁に映画館に通っている人にとっては、1本の映画として満足度が低い作品である。

パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト
Pirates of the Caribbean: Dead Man's Chest

  • 2006年 / アメリカ / カラー / 151分 / 画面比2.35:1
  • 映倫(日本):(指定無し)
  • MPAA(USA):Rated PG-13 for intense sequences of adventure violence, including frightening images.
  • 劇場公開日:2006.7.22.
  • 鑑賞日:2006.7.15./ワーナーマイカル新百合ヶ丘2 ドルビーデジタル上映での上映。先行レイトショー土曜20時40分からの回、280席の劇場はほぼ完売。
  • 公式サイト:http://www.disney.co.jp/pirates/ 予告篇、壁紙&スクリーンセーバー、作品情報など。ディズニーの映画サイトとして平均的な内容。