蝋人形の館


★film rating: B-
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

自動車旅行中の大学生たち(エリシャ・カスバートパリス・ヒルトンら)は、人気の無い田舎町に迷い込む。そこには陰気な蝋人形館があった。やがて学生たちは謎の人物たちによって血祭りに上げられる。蝋人形館に隠されたおぞましい秘密とは?


1933年と1953年に製作された怪奇映画の古典『肉の蝋人形』3度目の映画化との触れ込みだが、実際には過去の映画との共通点は犠牲者たちが蝋人形にされてしまう趣向くらいで、今回の物語は殆どオリジナルのようだ。あちらが狂気に取り付かれた芸術家が主人公だったらしいのに対し、こちらは犠牲者たちの視点で描かれている。結果、若者たちが閉鎖的な田舎で恐怖を味わうホラー映画、例えば『悪魔のいけにえ』(1971)に代表される映画の系譜に属することになった。『悪魔のいけにえ』は『テキサス・チェーンソー』(2003)として最近になってリメイクされているので、今更なんでそっちと同じような設定にしたのか少々理解に苦しむ。どうせならばオリジナル版を現代に蘇らせた方が、温故知新で面白くなっただろうに。


ロバート・ゼメキスジョエル・シルヴァーによるホラー映画専門のダーク・キャッスルは、古い怪奇映画のリメイク(『TATARI/タタリ』(1999)、『13ゴースト』(2001)など)か、幽霊船や亡霊ものといった手に垢の付いた題材を現代版ホラーとして作り変えるか(『ゴーストシップ』(2002)、『ゴシカ』(2003))してきた会社である。本作は前者に当たるが、そのアプローチの仕方が失敗しているように思える。狂気に満ちた現代こそ、狂える芸術家が暴れる様を活写すべきだったのではないだろうか。


ヒロイン役エリシャ・カスバート『24』よりも知性のある役柄で好感度良し。その親友役で映画本格的デヴューのパリス・ヒルトンは、ゴシップの女王としての客寄せパンダ的配役にも関わらず、予想していたよりもマトモな演技なのが意外。ヒルトンが画面に登場するたびに思わず彼女に注視してしまうのだから、何かしらのスター性があるのを認めるのはやぶさかではない。


チャド・ヘイズとケリー・W・ヘイズの脚本は、前半は勿体付けているだけな上に、これが初監督のジャウマ=コレット・セラの演出もかったるく、余り面白くない。セラのホラー演出は大して怖くないものの、スプラッター描写には力を入れた様子。それに、ここまでヒロインが肉体的にいたぶられるハリウッド製ホラー映画も珍しい。数々の痛そうな場面に加え、パリス・ヒルトンが殺害される描写なぞそこまでやるかと思われるが、アメリカでの彼女の位置付けを考えると可笑しささえ感じられる。意図を知って出演するヒルトンも、中々の根性かも知れない。


全て蝋で出来たという趣向が面白い人形館崩壊のクライマクスは、盛大な特撮の力でもって見せ場となっており、まぁ他のダーク・キャッスル映画同様に全体に凡庸ではあるものの一点豪華主義となっていて、それなりに楽しめる作品にはなっている。


蝋人形の館
House of Wax

  • 2005年 / オーストラリア、アメリカ / 114分 / 画面比1.85:1
  • 映倫(日本):R-15指定
  • MPAA(USA):Rated R for horror violence, some sexual content and language.
  • 劇場公開日:2005.10.22.
  • 鑑賞日:2005.11.11./ワーナーマイカルシネマズ新百合ヶ丘2 DTS上映での上映。金曜19時00分からの回、280席の劇場は10人程度の入り。
  • 公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/houseofwax/ 予告編やスタッフ&キャスト紹介はよくあるが、面白いのは蝋人形及び蝋人形館トリビア。分量は少ないけど人形師インタヴューもあり。但しこれらはパンフレットからの転載だけど。