ティム・バートンのコープス ブライド


★film rating: B+
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

両親の決めた政略結婚をすることになった繊細な青年ヴィクター(声:ジョニー・デップ)と、大人しくも芯のあるヴィクトリア(声:エミリー・ワトソン)は、ひと目会った時から互いを好きになってしまう。だがヴィクターは、うっかり死体の花嫁=コープス・ブライド(声:ヘレナ・ボナム・カーター)と結婚してしまったのだ。


マイク・ジョンソンと共同監督した、ティム・バートン初の長編人形アニメ監督作品(『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』(1993)と『ジャイアント・ピーチ』(1996)は、ヘンリー・セリック監督作品)は、やっぱりバートン色に染められている。


死者を蘇らせてしまう主人公の名前がヴィクターなのは、バートンの実写監督デヴューの短編『フランケンウィニー』(1984)と同じ。そもそもが、かの有名な人造人間を創造したフランケンシュタイン博士と同じ名前なのは言うまでもない。そういやフランケンウィニーは、電気ショックで蘇った愛犬だし、『ナイトメアー〜』と本作にも死んだ可愛らしい犬が登場するなぁ、などという細かい類似性も楽しめるが、モノトーンで陰気な沈んだ現世と、陽気でカラフルなあの世のコントラストや、狂騒的な脇役など、相変わらずどこを切ってもティム・バートン印が見える。それにダニー・エルフマンの音楽!『チャーリーとチョコレート工場』(2005)に引き続き、歌も音楽も好調だ。


ジョン・オーガスト、キャロライン・トンプスン、パメラ・ペトラーの脚本はストレートな展開で、特に捻りも無く、結末も予想通り。登場するのが人間とガイコツばかりなので、人形のデザインに関しても『ナイトメアー〜』や『ジャイアント・ピーチ』に比べて面白みの点で劣る。それでも、定石ながら飽きさせない語り口、無駄の無い話運び、各場面の面白さ、それに何と言っても高度な人形アニメーション技術がもたらす詩情を楽しむべきである。


アニメーションと言う通り、文字通り生命を吹き込まれた登場人物たちは個性豊かでユーモラス。エイドリアン・ブロディ似のヴィクターを始め、冥界の住人たちに、悪役でさえ楽しい。デフォルメされた外見や動きによって、人物たちの心情が表現される様は見事だ。但し、映像的にはデジタル・スティル・キャメラで撮影された映像が、高解像度でもフィルムに比べて陰影の彫りがやや浅く感じられるのは仕方が無いのだろう。


デップ、ボナム・カーター、アルバート・フィニークリストファー・リー、マイケル・ガフらのバートン映画の常連俳優らの吹き替えも良く出来ている。デップは気弱で繊細な青年を上手く演じているが、特に好演なのはボナム・カーター。不幸でありながら陽気で気丈な死体の花嫁を、すこぶる魅力的に演じている。クリストファー・リーの声のおっかなさは特筆もの。バートン作品新顔の不幸女優エミリー・ワトソンは、ここでも不幸な目に遭うが、自らの行動で状況を打開しようとする意外にタフなヒロインを控えめに演じていて、こちらも上手い。総じてレヴェルの高い演技が楽しめる。


感動的なラストを見るにつけ、西洋オバケ映画なのに「成仏」という言葉を思い出した。


ティム・バートンのコープスブライド
Tim Burton's Corpse Bride

  • 2005年 / アメリカ / 77分 / 画面比1.85:1
  • 映倫(日本):(指定無し)
  • MPAA(USA):Rated PG for quirky situations, action and mild language.
  • 劇場公開日:2005.10.22.
  • 鑑賞日:2005.10.29./ワーナーマイカルシネマズ新百合ヶ丘7 ドルビーデジタル上映での上映。土曜21時20分からの回、170席の劇場は7割の入り。
  • 公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/corpsebride/ 予告編、スタッフ&キャスト紹介、フォトギャラリー、アイコンや壁紙など。