コンスタンティン


★film rating: B-
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

この世は天国と地獄の狭間にあった。それぞれの住人が密かにこの世に入り込み、密かに均衡を保っていたのだ。だが、オカルト探偵ジョン・コンスタンティンキアヌ・リーヴス)は、地獄の住人たちの異変に気付く。何かが起ころうとしている。自殺した双子の妹の謎を追う刑事アンジェラ(レイチェル・ワイズ)と共に、謎を追うが。


自殺は大罪であり、自殺した者は、死後、天国には行けず地獄に堕ちる。


全編に散りばめられたキリスト教関係のネタも、そうは気にしなくても楽しめる筈、という作りにはなっている。先に述べたキリスト教における自殺の位置付けを知っていれば、後はそう問題無いだろう。確かに細かいところに関しては、知識があればより楽しめるのだろうけれども。


かつて犯した罪により地獄行きが決定している男が、死後は天国に行きたいが為に、日頃から自らの特殊能力を使い、悪さをする地獄の住人どもを撃退している。この設定は面白い。ただ問題は、この映画に目新しさと面白みが少ないところにある。


例えば冒頭の悪魔祓いの場面は『エクソシスト』(1973)の焼き直しだし、地獄の焦土世界は『ターミネーター2』(1991)に出てきた核戦争後の世界みたい。四つんばいで這いずり回る、上半分の頭部が切断されたグロテスクな下級悪魔たちは、『死霊のはらわた2』(1987)か『バイオハザード』(2002)の化け物のよう。地獄の住人に聖なる祈りが刻まれた弾丸を撃ち込むと燃えて消えてしまうのは、『ブレイド』(1998)か。このように、既視感に襲われることしばしば、だ。


フランシス・ローレンスの演出は、テンポやメリハリが無く一本調子気味。面白そうな題材を無駄にしている。ハードボイルドものを勉強した後はあり、印象は悪くないだけに惜しい。全体に漂う暗い雰囲気も捨てがたいし、黒を基調とした画面や、影を意識した照明など、MTV出身らしくこだわった映像面で見るべき点が多いのだが(名手フィリップ・ルースロ撮影)。


末期癌なのにヘヴィースモーカー、自己中心的で厭世的なコンスタンティンの性格は面白く、ハードボイルドの主人公に相応しいもの。それが終盤で変化していく様も重要なテーマとなっていて、ここいら辺の描き込みは案外悪くないように思える。しかし黒い細身のネクタイと黒いロングコートも似合っているキアヌ・リーヴスは、スター然としていて魅力的ではあっても、相変わらずの能面演技。レイチェル・ワイズが細かいところまで表情豊かで、大げさにならずに上手いのと対照的だ。彼の演技とローレンスの演出が共に単調ゆえ、負の相乗効果を上げているのは如何にもまずい。


この作品ではっとさせらるのは、天使と悪魔をそれぞれ演じる演技派2人だ。天使ガブリエル役のティルダ・スゥイントンは、いつもながら年齢不詳、性別不詳で正にお似合い。ときに大人の女性、ときに青年、ときに悪質な悪ガキ、と様々な表情をくるくると見せてくれる。悪魔ルシファー役のペーター・ストルマーレは、意表を突いた服装に相応しく、大袈裟で見得を切った演技が楽しい。この2人の前では、キアヌはまだまだひよっ子に見えてしまう。


コンスタンティン
Constantine