ブレイド3


★film rating: B-
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

吸血鬼狩りに明け暮れている吸血鬼と人間の混血であるブレイドウェズリー・スナイプス)。しかしある日、逆に罠を掛けられ連続殺人犯としてFBIに逮捕されてしまう。吸血鬼と闘う人間の組織「ナイトウォーカーズ」に救出されたブレイドは、相棒ウィスラー(クリス・クリストファーソン)の娘アビゲイルジェシカ・ビール)らと共に、蘇った吸血鬼の始祖ドレイク(ドミニク・パーセル)らに闘いを挑む。


吸血鬼と人間の特性を備えた狩人ブレイドを主人公にしたシリーズも、どうやらこれで打ち止めのようだ。監督・脚本に過去2作の脚本家デヴィッド・S・ゴイヤーを持ってきたのだから、ゴイヤーの意気込みはあろう。しかしながら、話は壮大になっていても、映画のスケールとしてはこれが一番小さいものとなってしまった。


冒頭にある古代遺跡におけるドレイク覚醒の場面は、中々期待させる出だしだ。が、いきなりゴイヤーの演出はパンチ不足。恐怖が盛り上がるべき場面なのに、それが無い。この人、ホラー映画監督としての資質に欠けているのではないだろうか。そんな訳で、映画は吸血鬼という素材を扱う振りをしながらないがしろにし、もはやタダのアクション映画と化している。ゴイヤーがやりたかったのは、元々こういうものだったのだろう。


じゃぁアクション映画としてはどうかと言うと、それも問題がある。陰謀を画策する吸血鬼側と、それを阻止せんとするブレイド&人間側という、反目し合う勢力が登場するにも関わらず、物語が上手く抗争に収斂されていない。物語を語ることよりもアクション場面増量ばかりしていて、これでは盛り上がりに欠けてしまうのも当然だろう。また、最近流行の下手糞アクション映画の例に漏れず、細切れ編集でアクションを誤魔化しているので、めまぐるしいばかりで爽快感や凄みが無い。今思うと、アクションとホラーの場面にのみ異様に力が入っていた1作目が、一番アクションの撮り方が分かっていた。スナイプスの凄みのある動きを、下手な編集で誤魔化さずともリズミカルに描写していたのだから。


それでもこの映画の救いは、さしてテンポが良い訳でもないのに、退屈さに足を突っ込んでいないのはところだ。


実はキャスティングに妙な面白味があって、映画本編よりもそっちの方が見るべき点がある。すっかり好好爺と化しつつも、70年代反骨精神を忘れないかのようなクリストファースン。出番が少ないのが惜しまれる。ここは若者主体の脇役の面々を楽しむべきなのだろう。クリストファースンの娘役ジェシカ・ビールの格闘ヒロインも、映画の売りの1つなのだから。そのビールも動きは良いし、演技も力が入っているが、不出来な脚本や演出を補うまでには至っていない。Girl next doorな親しみ易い、ちょっと都会的でない美人、という個性が生かされる役柄に出会うことを望みたい。ライアン・レイノルズはハンサムだし体格も良いのに、減らず口を叩くナイトウォーカーズのリーダー役で、過去このシリーズに少なかったユーモアを醸し出している。一番面白いのは、女吸血鬼役パーカー・ボージー。メイクやヘアスタイルが相俟った怪演で、強烈な印象を残す。『アメリカン・パイ』(1999)のナターシャ・リオンがこれまた凄い役で出ていて、最初は分からなかったくらい。こういったところに、何だかキャスティングにこだわったヘンな映画だった、との印象を残す。


ブレイド3
Blade: Trinity

  • 2004年/アメリカ/114分/画面比2.35:1
  • 映倫(日本):(指定無し)
  • MPAA(USA):Rated R for strong pervasive violence and language, and some sexual content.
  • 劇場公開日:2005.5.7.
  • 鑑賞日:2005.5.13./ワーナーマイカルシネマズ新百合ヶ丘5 ドルビーデジタルでの上映。金曜21時35分からの回、164席の劇場は20人程度の入り。
  • 公式サイト:http://www.blade3.jp/ フォトギャラリー、予告編、武器紹介、ジェシカ・ビール来日記者会見採録、ブログなど、内容もりだくさん。