ナショナル・トレジャー


★film rating: B-
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

歴史学者で冒険家のベン・ゲイツニコラス・ケイジ)は、アメリカの歴史に埋もれた秘宝を追い求めていた。ゲイツ家は何世代にも渡って秘宝を追い求めていたが、その誰もが夢破れていたのだ。パトロンのイアン(ショーン・ビーン)の裏切りに遭い、相棒のハッカー・ライリー(ジャスティン・バーサ)と共に辛くも危機を脱したベンは、秘宝の鍵が厳重な管理下に置かれている独立宣言書にあることを知る。こうしてベンとイアンとの競争が始まった。


パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』(2003)に続くジェリー・ブラッカイマー製作のディズニー映画第2弾は、さらなるファミリー映画路線となっている。いや実は、映画のエンドクレジットを観るまでは、ディズニー・ブランドでも「大人も鑑賞可」のタッチストーン製作映画かと勝手に思い込んでいたのだが、さにあらず。悪役のショーン・ビーンに、主人公ベンを追うFBIにハーヴェイ・カイテル、ベンの父にジョン・ヴォイト、祖父にクリストファー・プラマーと、渋くて豪華な大人の役者の顔触れに騙されてはいけない。


この映画、インディ・ジョーンズに着想を得たのに加えて、テンプル騎士団が登場することからすると、ダン・ブラウンの『ダ・ヴィンチ・コード』大ヒットに触発されて急遽作られた映画ではないか、という読みはあながち外れていないように思われる。主人公は歴史学者で冒険家なだけでなく、度胸満点の天才に想定しているのだから、やることなすこと外れ無し。推理だって100発100中。都合の悪いときに必ず都合良く鉢合わせする悪党どもも、時刻が関連する手掛かりも、何もかもがぴったりのタイミング。余りに簡単、余りに安直なお子様ランチな作りには呆れるしか無く、脚本に時間を掛けていないのは明らか。良くも悪くもジム・カウフらしい軽い脚本だが、それでも随分とお手軽に作ったものだ。しかし「これはディズニー印のお子様向け活劇」だと思えば、左程腹も立たない。観ている間に頭の中がクエスチョン・マークだらけだった僕も、ディズニーのクレジットを読んで納得したのだった。だってこの映画、アクションや暴力も、死人すら殆ど無い、これぞ家族向け映画と呼ぶに相応しい映画になっているのだから。


最初から狙いがはっきりしているのは、実は監督の人選にも表われていたようである。ジョン・タートルトーブは『クール・ランニング』(1993)でヒットを飛ばし、その後は『あなたが寝てる間に・・・』(1995)、『フェノミナン』(1996)、最近ではブルース・ウィリスの『キッド』(2000)なぞを監督している。アクション映画の経験が殆ど無い、ドラマやコメディ主体でやってきたタートルトーブを起用したのも、不特定多数の観客に好まれる作風を期待されたからなのだろう。


だからケイジと若いハッカージャスティン・バーサや、独立宣言書に詳しい博士役ダイアン・クルーガー(意に反してケイジらと行動を共にしてしまう)との掛け合いも、安心して観られてしまう。驚きや新鮮味はなくとも、定番ではあっても、何となく楽しめてしまうのだ。特に『トロイ』(2004)のヘレン役での死後硬直演技が詰まらなかったクルーガーからは、真面目なんだけれども好奇心につい負けてしまうおかしみを引き出している。彼女にこういった役が似合うのも発見だった。実はこの映画が観ていられるのは、こういった描写のお陰だろう。この点でタートルトーブは起用に応えている。その反面、数少ないアクション場面の演出で下手さを露呈しているし、冒険映画ならではの高揚感が乏しいのは減点である。


高揚感の欠落は、大雑把で緻密さには程遠い脚本にも大きな責任がある。折角の宝探し映画なのに、最近のハリウッド映画にしてはやけにスケール感に乏しい。冒頭の北極圏以外は、ワシントンD.C.フィラデルフィア、マンハッタンと、舞台もロケも殆どがアメリカ国内ばかり。まぁアメリカ国内の歴史的名所巡りと言えば聞こえは良いものの、やっぱり安手の映画なのだろう。終盤、宝探しに心奪われてしまう下っ端悪党も、何かあるかもと思っても特に何も無し。改心するとか何かして波乱を起こす展開にも持って行きようがあったろうに、脚本家たちは捻りに興味を引かれなかったようだ。また、手掛かりが手掛かりを呼ぶプロットに、悪党に追いつかれまいと奮闘する主人公の映画でも、内容が大してある訳でも無い家族向けにしては130分の上映時間は長過ぎる。手掛かりをあと1つぐらい減らしてテンポを上げても良かったのではないだろうか。


そういえばブラッカイマー印の『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』も、退屈はしないものの、緊張感の無い二転三転する展開がだらだら続く映画だった。この映画も似たようなもの。家族向けに作るのであれば、もっとスリムにしてもらいたいものだ。


ナショナル・トレジャー
National Treasure