THE JUON/呪怨


★film rating: B-
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

在日留学生のカレン(サラ・ミシェル・ゲラー)は、突然失踪した日本人介護士の代理で、痴呆老人のいるアメリカ人一家を訪れる。そこは死者の怨念が篭った家で、そこに足を踏み入れた者には恐るべき怪異が迫るのだ。


不穏が漂う空気が一瞬で惨劇に転調する冒頭を見るに付け、これは中々期待出来そう、と思った。向こうではアイドル扱いのサラ・ミシェル・ゲラーを主役に据え、周りをクレア・デュヴァルやビル・プルマンらの中堅俳優で固めたのは、北米市場的には当然だろう。知っている顔触れが出ているし、冒頭から衝撃的。なるほど、北米大ヒットの理由も頷ける。怖い怖いとの世評の『呪怨』シリーズを観るのは初めてだったが、実際のところはこの映画、僕には左程怖く感じられなかった。突然の脅かしや、出るぞ出るぞと思わせて出たぁ、とする技術は、効果音の使い方も含めて中々堂に入ったものではあったのに。まぁそれは、ホラー映画を見慣れているから、というのもあるのだろうけど。僕が怖くなかった理由は、情念とかから来る心底薄ら寒くなる怖さではなく、脅かし主体であるということ。それと映画全体のテンポに問題があったからではないだろうか。


そもそもは清水崇が監督・脚本したオリジナル・ヴィデオに端を発し、劇場用リメイク版にまでなったものを観たサム・ライミがハリウッド版を是非、と熱望したのが今回の作品だということ。実弟のテッド・ライミが出演しているのはご愛嬌。とまれ日本が舞台で黒髪でないと怖くないとこだわり、清水自身による監督・脚本なのだから、怖くて当然だった筈、だ。


それにしても、字幕等の説明も無く時間を前後させながら、観客を混乱させることなく家にまつわる犠牲者たちを語る技術は悪くない。サラ・ミシェル・ゲラーが主役というよりも、家そのものを軸にした凝った構成は面白いし、その割りに筋がすっきりしている。それが仇となって、あちこち論理的に納得がいかない点が浮き彫りになっているくらい。いやいや、筋道が通っていない不条理だから怖い、という声も聞こえてきそうだが、そもそもの怨念発生の原因が書き割り的に陳腐で説得力に欠くという、肝心なところで粗が目立っている。この点はもっと脚本と演出で練るべきだった。


清水崇の演出の脅かしは楽しめるが、全体にかったるいのが弱点。じっくりと雰囲気を狙ったと言えば聞こえが良いものの、メリハリが無く退屈寸前だ。これで淀みない緊張感があれば別だろうが、テンポが無いのはいかんともしがたい。それでも終盤の畳み掛けるような展開は楽しませてくれるので、観終わった後にそう悪い印象が残らないのは良しとしようか。


当然ながら日本人俳優も出ていて、事件を捜査する刑事役の石橋凌が中々渋く、それらしい雰囲気が出ていた。


THE JUON/呪怨
The Grudge

  • 2004年/アメリカ、日本、ドイツ/カラー/98分/画面比1.85:1
  • 映倫(日本):(指定無し)
  • MPAA(USA):Rated PG-13 for mature thematic material, disturbing images/terror/violence, and some sensuality. (cut version)
  • 劇場公開日:2005.2.11.
  • 鑑賞日:2005.2.20./ワーナーマイカルシネマズ新百合ヶ丘4 DTSでの上映。日曜19時10分からの回、175席の劇場は20人程度の入り。
  • 公式サイト:http://www.thejuon.com/ 予告編など、まぁ標準的内容のサイト。「呪いのブログ」なるものがあるので期待したら、余り大したことなし。劇中に登場した店を発見!などは面白いのだけど。