エイリアンVS.プレデター


★film rating: B
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。


2004年10月。大企業ウェイランド社人工衛星が、南極の地下に巨大遺跡都市があることを発見する。人類最大の偉業とばかり乗り込んだ同社社長ウェイランド(ランス・ヘンリクセン)と、彼に雇われた登山家サナー(アレクサ・ウッズ)らは、そこが何かの儀式を行う場所だったことに気付く。地下都市は宇宙からやってきた二種族の闘いの場だったのだ。遺跡は眠りから目覚め、人類を巻き込んだエイリアンとプレデターの闘いが、再び切って落とされる。


ダークホース・コミック社の『エイリアンVSプレデター』映画化は随分と前からささやかれていて、ようやく企画が実現した。と言っても、そもそもが20世紀フォックスの所有する怪物ホラー映画の合わせ技なので、自社キャラクターの再利用に他ならないのだが。これが過去の作品にもきちんと目配せ怠り無い、まともな出来になったのは、脚本・監督のポール・W・S・アンダーソンの熱意によるものだろう。


世間では『ブギーナイツ』(1998)、『マグノリア』(1999)の「批評家受けの良い方」のポール・トーマス・アンダーソンに比べ、『モータル・コンバット』(1995)、『イベント・ホライゾン』(1997)、『バイオハザード』(2002)等のジャンル映画ばかり連発している「批評家受けの悪い」方のポール・アンダーソンは、『バイオハザード2/アポカリプス』(2004)の監督を放り投げ、どうやらこちらに神経と熱意を注いだようだ。その甲斐あってか、不出来な脚本の『バイオハザード2』に比べて、こちらは意外な程に生真面目。地下古代都市からプレデターという種族の生態の一部など、過去の映画2本を踏襲しつつも新解釈も加え、意外にもと言っては失礼だが、丁寧に映像化している。影の悪役としてお馴染みウェイランド湯谷社の社長も初登場。その役にランス・ヘンリクセンを起用し、『エイリアン2』(1986)、『エイリアン3』(1992)で彼が演じたビショップへの目配せも忘れていない。狩猟民族であるプレデターについても、『プレデター2』(1990)の設定を踏まえた上で新説も色々描き出し、両シリーズを観ている観客にとっては中々楽しめるものとなっている。アンダースン本人はプレデターよりもエイリアンへの思い入れが強いそうだが、出来上がった映画はむしろプレデター色が強く、『プレデター3/エイリアン番外編』とでも呼ぶべきものになっている。


CG特撮全盛の昨今にあって、CGを巧みに取り入れつつも、モンスター・スーツを前面に押し出したのも評価出来よう。エイリアンとプレデターの肉弾戦が文字通り見せ場の映画にあって、『エイリアン』シリーズと『プレデター』シリーズの両方に参加していた、アレック・ギリスとトム・ウッドラフ・ジュニアがモンスター担当なので、異星人たちの造形も安心して観ていられる出来映え。この辺はきちんと撮られているので、見世物映画としての水準は十分にクリアしていると言える。また、両元ネタシリーズが暴力描写でR指定だったのに、こちらは興行的制約を避ける為に流血描写をなるべく避けてPG-13指定の映画となっている。それが良いかどうかは別として、流血描写がカットされていると感じさせない撮り方になっているのは、それなりに見せる(=省く)技術があることを示している。


ただ、異星人の襲来や激突が描かれるまでの前半が緊張感を欠き、左程わくわくさせてくれない。また、ただ殺される為だけの記号のような人物が多いのは、この手の映画の常套なのでともかく、イタリアのセクシー・スター、ラウール・ボーヴァを起用しているのにろくに性格付けをしていなかったり、逆にそれなりに描かれている人物を呆気無く殺してしまったりと、今ひとつバランスが良くない。こういった辺りに、ポール・W・S・アンダーソンの監督としての未熟さを感じる。


とまれ、左程誰もが期待してはいない程度のSFホラーアクション映画として観るならば、短い上映時間の間は楽しませてくれる映画として、こちらの期待値を満たすだけの出来にはなっている。


エイリアンVS.プレデター
AVP: Alien Vs. Predator

  • 2004年/アメリカ/カラー/101分/画面比2.35:1
  • 映倫(日本):(指定無し)
  • MPAA(USA):Rated PG-13 for violence, language, horror images, slime and gore.
  • 劇場公開日:2004.12.18.
  • 鑑賞日:2005.1.3./ワーナーマイカルシネマズつきみ野2 ドルビーデジタルでの上映。正月休み最終日の月曜13時45分からの回、161席の劇場は7割の入り。