バイオハザードII アポカリプス


★film rating: C+
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

あれから数時間後。T-ウィルス感染を防ぐためにバリケードによって閉鎖されたラクーン・シティは、地獄絵図と化していた。生者の生肉を求めてさまよう生ける死者と、得体の知れない化け物どもが跋扈(ばっこ)する中で、アリス(ミラ・ジョヴォヴィッチ)、特殊部隊隊員のジル(シエンナ・ギロリー)とカルロス(オーデッド・フェール)らは、市内に取り残された要人の娘の救出と脱出を図る。


廃墟と化した市街地の真ん中に佇むミラを捉えたエンディングから2年、日本製人気ゲームの映画版が帰ってきた。監督は『エイリアンVSプレデター』(2004)抜擢でそっちに移ってしまったポール・W・S・アンダーソンから、数多くのSF/アクション映画の第2班監督を務めてきたアレクサンダー・ウィットに交代したものの、脚本は引き続きアンダースン自身が担当している。だから、ジャンル映画だけでなくオリジナルのゲームも大好きな脚本家の趣味大爆発という点では、前作以上に派手な仕上がりになっている。


ゲーム版の『3』を元にしたとおぼしきこの映画、現実離れ・荒唐無稽・破天荒と呼ぶに相応しい展開と、数々のアクションを見せる。そもそもジルやカルロスといった登場人物や、事件の黒幕である巨大企業アンブレラが何故か核兵器保有している、などの設定からしてゲームからの引用なのだから。ジルに至ってはゲームと同じ衣装で、過去に『モータル・コンバット』(1995)というゲームの映画化を手掛けたアンダースンらしい趣向だろう。前作以上にゲーム版に近付いたその時点で、評論家たちからこてんぱんに叩かれるのも当然だろうが、過去のホラー映画などからの引用もあちこちも含めてそういう映画と割り切って観てしまえば、これはこれで結構楽しめる。ゾンビ登場場面も前作以上に多く、物語上不必要と思われる場面までこさえて出現させ、いやはやアンダーソンはやりたい放題だ。ラストもまだこれから続く展開なので、このシリーズはアンダーソン色が強いものとなりそう。


しかしこの映画で一番の問題は、そのアンダーソンの脚本のまずさにある。趣味に走って馬鹿馬鹿しいのは結構。だが映画のプロットがどうにもすっきりしない。救出→突破→脱出という展開に絞るべきだったし、ネメシス(ゲームでいうところの”追跡者”)といういかにも強そうな悪役を持ってくるのならば、執拗に主人公たちを追い詰める脅威にすべきだったろう。だからクライマクスの1対1の殴り合いも盛り上がりに欠けてしまうのだ。アリスとジルという2人のヒロインの描き方が薄味で、人間以上と普通の人間という存在くらいでしか描き分けていないのも痛い。前作が一般の映画観客にも、ゲームファンにもアピールする脚本だっただけに、この後退は残念なことだ。


それではアンダーソンが自滅している中で、新人監督ウィットがどう自分の色を出すのか注目すると、彼はベクトルをホラーよりもアクションの方向に向けている。どうやら自分の得意分野に近付けた様子。この監督、『スピード』シリーズ、『グラディエーター』(2000)、『ボーン・アイデンティティー』(2002)、『トリプルX』(2002)といった映画で第2班監督を務めてきたのだから。またそのフィルモグラフィはアクション一辺倒ではなく、テレビシリーズ『X-ファイル』の「クリーチャー班監督」などという肩書きもあり、この映画にはうってつけの人材と思われたのは当然だろう。そんな訳でオリジナルのゲーム版同様に、怖さよりもアクション重視になっていったのは納得できる。畳み掛けるように連打される見せ場をけれんたっぷりに演出し、取り合えずは飽きさせない。只し接近戦なぞの場面になると、最近の映画に多い接写+手ぶれ撮影を多用している為、めまぐるしいばかりで何が何やら分からず、爽快感に欠けてしまっているのは大問題。アクションの撮り方が分かっていないのにもうんざりだが、ゾンビ登場場面では何故かスローモーションになってしまうのかの意味も分からない。


主役のミラはさらにスター然としてきて、芯の太い女優になりつつあるようだ。このままスケールの大きいスターになってもらいたいと思う一方、やや人間離れした風貌がこういったSF/アクション/ホラー映画に相応しいのも事実で、このままジャンル映画御用達女優になってしまう可能性も否定できない境界に来ているように思える。


バイオハザードII アポカリプス
Resident Evil: Apocalypse

  • 2004年/アメリカ/カラー/91分/画面比2.35:1
  • 映倫(日本):(指定無し)
  • MPAA(USA):Rated R for non-stop violence, language and some nudity.
  • 劇場公開日:2004.9.11.
  • 鑑賞日:2004.9.11./ワーナーマイカルシネマズ新百合ヶ丘1 ドルビーデジタルでの上映。公開初日土曜21時00分からの回、452席の劇場は9割の入り。
  • 公式サイト:http://www.sonypictures.jp/movies/residentevilapocalypse/ 最近の映画サイトらしくフラッシュばりばり。ミラ来日記者会見、スタッフ&キャスト紹介、予告編など。公式バナーコンテストなどというのもやっていたらしい。