シュレック2


★film rating: A-
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

シュレック(声:マイク・マイヤーズ)は前作のラストで結ばれたフィオナ姫(声:キャメロン・ディアス)、親友のロバ・ドンキー(声:エディ・マーフィ)と共に、姫の両親に会うべく彼女の祖国へと行く。国王夫妻(声:ジョン・クリースジュリー・アンドリュース)は彼らを出迎えるが、父王は2人の結婚に反対の様子。訳ありの彼は、凄腕の殺し屋である長靴をはいた猫(声:アントニオ・バンデラス)をシュレックに差し向けるのであった。


ディスニー・アニメの古典を茶化した快作『シュレック』(2001)の続編は、アップテンポの展開に笑いの量も増大で、そういった点では前作を凌駕する出来映えである。


主役3人のレギュラーの中では、マーフィの躁状態全快がやはり楽しく、彼らをサポートするジョン・クリースジュリー・アンドリュースの堂に入った脇役ぶりもさすがだ。ネームバリューに偏らず、キャラクターも踏まえたキャスティングが嬉しい。中でも猫役アントニオ・バンデラスには大爆笑。猫自身の意外にも卑小なキャラクター設定もさることながら、バンデラスの巻き舌なスペイン訛りも相まって、これがもっと出番があっても良いと思わせる程の大笑い傑作キャラになっている。渡米直後のセクシー路線が嘘のように、最近では『スパイキッズ』シリーズなどで冴えない父親役を好演していたりするバンデラスの、ここでは嬉々とした快演が楽しめる。その一方で、嫌味でハンサムなプリンス・チャーミングのキャラクター設定が平板で出番も少なく、わざわざ吹き替えにルパート・エヴェレットを起用したのに勿体無い、という部分もあるが、まぁ濃い登場人物がやたら多くてもゴチャゴチャしたかも知れないので、配分としてはこれくれいで良かったのかもしれない。


と、新旧交えた登場人物の中で、シュレックが随分と物分りの良い、頑固な部分もあるものの、ただの善人(善怪物)になってしまったのが惜しい。前作にあった毒気が薄れたのはこのキャラクター変更にもよる。


だがお楽しみは止まらない。さらなる要素としては、全編ミュージカル仕立てになったことが挙げられる。『ファンキー・タウン』、『リヴィン・ラ・ヴィダ・ロカ』、『ヒーロー』(映画『フットルース』(1984)の方)、『オール・バイ・マイセルフ』など、有名既成ポップスの選曲が楽しいし、ちらり登場の『ローハイド』、『スパイ大作戦のテーマ』の使われ方も可笑しい。皮肉でもなんでもなく、フルCGI作品に相応しく深みの無いアレンジが画面に合っていて、映画にノリと勢いをもたらしているのだ。この趣向は成功した。


製作者ジェフリー・カッツェンバーグの古巣への怨念は未だ覚めやらず、今回もこれでもかとディスニー・アニメをおちょくっている。この後には『ファインディング・ニモ』(2003)を意識したとおぼしきCGIアニメ『シャーク・テイル』が控えているので、本当にこの人の執念深さは見上げたものだ。但しそういったギャグやおちょくりが、ここでは単なる表層的なものに留まっている。この点が前作との一番の大きな違いだろう。


前作は映画のプロットまでもが、ディズニーの(特に『美女と野獣』(1991)をなぞ)意識し、ひっくり返したところに一番の面白さがあった。今回はそこまでいっていない。ミュージカル仕立てなのも、ギャグ満載なのも、表層的な楽しさにのみ終始していて、前作を思い出すとかえって物足りなく思えてくる。その一方で、本質的な部分での毒は薄まったものの、それがより大衆受けする要素となっているのも確かだろう。「あんな緑の化け物なんぞ」と生理的に拒否反応を示す人にも受け入れやすい、間口の広い映画になっているに思えた。


実際、この映画の楽しさは格別である。『1』が恋愛、『2』が結婚とくれば、当然ながら『3』は・・・などと続編のテーマも想像出来るし、そのテーマをどのように料理してくれるのか。今度こそ捻りと毒をあと1杯、と期待したいものだ。


シュレック2
Shrek 2

  • 2004年/アメリカ/カラー/93分/画面比1.85:1
  • 映倫(日本):(指定無し)
  • MPAA(USA):Rated PG for some crude humor, a brief substance reference and some suggestive content.
  • 劇場公開日:2004.7.24.
  • 鑑賞日:2004.7.24./ワーナーマイカルシネマズ新百合ヶ丘4 ドルビーデジタルでの上映。公開初日の土曜21時25分からの回、175席の劇場は9割の入りで反応も上々。
  • 公式サイト:http://www.shrek2.jp/ のっけから『ファンキー・タウン』が流れるサイト。ストーリー紹介、キャスト紹介、予告編、カレンダー&壁紙のみと、夏休みの大作にしては随分と寂しい内容。