フォーチュン・クッキー


★film rating: A-
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

心理カウンセラーとしてバリバリ働くキャリア・ウーマンの母テス(ジェイミー・リー・カーティス)と、ガレージ・バンド活動に夢中な高校生の娘アナ(リンゼイ・ローハン)の仲はギクシャクしている。ところがある朝目覚めると、2人の身体が入れ替わっている。明日はテスの再婚が、今晩はアナのバンド・オーディションが迫っているというのに!


身体が入れ替わる設定に新味が無いって? その通り。でも、ジョディ・フォスターが出ていたというオリジナル版(1976年作品)は観ていないけれども、今回の映画化は時代にマッチした設定や描写が続出しているので再映画化の意味があったし、本当に大笑いさせてくれる映画が少ない中、げらげら笑わせてくれるコメディとして、かなりの価値があろうというものだ。


患者からひっきりなしに携帯電話が掛かってくる働き過ぎ気味の母親と、アヴリル・ラヴィーンなゴス・メイクをしてギター・ソロを弾きまくる娘を紹介する導入部からして手際良く、快調な滑り出し。2人の関係がしっくりいっていないことを丁寧に描写しているのも成功している。この序盤をしっかりと時間を掛けて描いたことより、入れ替わり後に起こるドタバタが効いてくるのだ。


朝目覚めてみると娘は母親の姿になり、鏡を見て自分が老けているのを見て大ショック。一方の母親は娘が内緒にへそピアスしているのに驚くといった具合。取り敢えず元に戻るまで他人にバレないようにと、大騒動の1日が始まる。互いに慣れない日常生活を目立たずに過ごしながらも、元に戻る方法を探る筈・・・が、やっぱり人間の本性は変わらない。2人ともつい「地」が出てしまう。特に娘アナの心を持つテスのはじけっぷりが最高だ。自分好みの衣装をカードで買い捲り、ヘアスタイルも変え、ピアスもいっぱい付けて出社。言動も今までのお堅い感じから豹変して周りもびっくり。ジェイミー・リー・カーティスは自らの持つコメディ・センスを存分に発揮し、大いに笑わせてくれる。一方の母親テスの心を持つアナは、髪に櫛を入れ、マジメ風な衣装に身を包み、意地悪でいけすかない教師を頭脳と度胸で凹ましたりして愉快。リンゼイ・ローハンの演技はわざとらしくなく、細かい言動も自然なのがかえって可笑しい。


マーク・S・ウォーターズの演出は勢いがあって笑わせるタイミングも決まっているし、ヘザー・ハックとレスリー・ディクソンの脚本も数々の障害を用意しているので、最後まで一気呵成に見せてくれる。真に理解し合うには相手の立場を想像することから始めなくてはいけないのに、本当に立場を逆転させてしまうなんてお説教として浅薄だ、などと言うのは野暮。そういった点では深みも無いし、名作として残る作品ではないだろう。でも、大笑いさせてくれた後にはそれなりに感動させてくれるのだから、気軽に観て楽しめる映画として最高じゃないか。アニメはともかく、ディズニー・ブランドもまだ捨てたものじゃないなと思わせる。


家族で楽しめる映画としても、是非お勧めしたい。


フォーチュン・クッキー
Freaky Friday

  • 2003年/アメリカ/カラー/97分/画面比1.85:1
  • 映倫(日本):(指定無し)
  • MPAA(USA):Rated PG for mild thematic elements and some language.
  • 劇場公開日:2004.5.1.
  • 鑑賞日:2004.5.1./渋谷東急 ドルビーデジタルでの上映。ゴールデン・ウィーク真っ只中の土曜初日、映画の日は11時30分からの回、300席の劇場は30人程度の入りなのが寂しい。もっと当って欲しい映画なのになぁ。
  • 公式サイト:http://www.disney.co.jp/movies/fortune/ 動画は予告編のみで、後はテキストによる紹介ばかり。最低限の情報は載っているサイト。