ディボース・ショウ


★film rating: B
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

辣腕の離婚訴訟専門弁護士(ジョージ・クルーニー)は、大富豪の浮気による離婚訴訟を引き受けることになる。弁護士はその富豪の妻(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)とあの手この手でやり合うことになり、闘いは法廷の外で第2、第3ラウンドを迎える。


コーエン兄弟ジョージ・クルーニーの『オー・ブラザー!』(2000)以来2度目のコンビ作品は、往年のハリウッド映画らしいコメディを目指した様子。ヤリ手弁護士と財産目当ての冷血美女の闘いという、奸智にたけた美男美女のダマしダマされの頭脳戦は、コメディとしてうってつけの題材である。しかし脚本家たちが4人(ロバート・ラムゼイ、マシュー・ストーン、イーサン・コーエンジョエル・コーエン)もいたことが示す通り、どうやら船頭多くして船は山に登ってしまったようだ。


いや実際、2人の闘いは面白く、特にヒロインが敵のテリトリーに入り込んでヤリ込めるあたりは実にアッパレ。しかし脚本家たちは、基本プロットによってたかって余計な要素を付け加えてしまった。


弁護士が自らの歯の白さにこだわったり、その上司が化け物じみた老醜まるだしの大物弁護士だったり、なるほど、一筋縄ではいかない登場人物にコーエン兄弟らしく色を付け加えているのは分かる。でもそれらが素直に笑えない、つまりはコメディとしての「可笑しさ」に貢献していないところを見ると、どうにも作り手の考え過ぎに見えてしまう。どうせこういったコメディは最後は予想がつくのだから、プロット以外に面白くしなくては、と彼らは思ったのだろうか。本筋とは別のディテールというのも映画の楽しみではあるが、それよりもここはメイン・プロットである2人の頭脳戦に絞り込むべきだった。そう考えると前半の法廷場面も物足りない。ここは弁護士の辣腕振りを見せつけるべく、ヒロインとの火花散らす舌戦場面に仕立てた方が良かったのではないか。


また、後半が急にドタバタ劇になってしまうのは、笑えるものの映画のまとまりを妨げているように思える。これらは、脚本家たちが自分たちの好きなように書き、それが直接作品の質に貢献していなかったことを示していよう。


しかし映画にはジョージ・クルーニーキャサリン・ゼタ=ジョーンズという、フェロモンむんむんのセクシー・スターの共演というお楽しみがある。この濃い取り合わせは成功で、特にクルーニーにとっては『アウト・オブ・サイト』(1998)でのジェニファー・ロペス以来の当りだろう。そのクルーニーはヤリ手でありながらどこか抜けている2枚目半を嬉々として演じているし、ゼタ=ジョーンズは法廷場面以外は全て胸元見せる衣装ばかりとっかえひっかえで登場し、クルーニーに負けじと色気を振りまき、かつ氷の冷たさと燃える負けん気を見せ付けていて最高だ。ゴージャス・カップルは見ているだけでも楽しいのだが、そうなるとやはりこの2人の頭脳戦で最後まで引っ張って欲しかったという気が余計にする。


とまぁ、作品の出来には満足できないものの、これはこれで笑わせてもらったことも正直に告白しておこう。


ディボース・ショウ
Intolerable Cruelty

  • 2003年/アメリカ/カラー/100分/画面比1.85:1
  • 映倫(日本):(指定無し)
  • MPAA(USA):Rated PG-13 for sexual content, language and brief violence.
  • 劇場公開日:2004.4.10.
  • 鑑賞日:2004.4.10./TOHOシネマズ六本木ヒルズ スクリーン2 ドルビーデジタルでの上映。公開初日土曜16時35分からの回、369席の劇場は7割の入り。
  • 公式サイト:http://www.divorce-show.jp/ 「いつもの夫探し」という軽いゲームと、「夫婦関係」という古代からの結婚に関するトリビアちっくなコンテンツが良い。特に後者は言い回しが面白く(ちょっと翻訳ものっぽい感じだけど)、お勧め。