バッドボーイズ2バッド


★film rating: C+
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

マイアミ市警の刑事コンビ、マーカス(マーティン・ローレンス)とマイク(ウィル・スミス)の暴れっぷりを描くアクション・コメディ第2弾。ハチャメチャな相棒に愛想尽きかけたマーカスは、連邦麻薬捜査局に勤務する妹のシド(ゲイブリエル・ユニオン)が危険な潜入捜査に赴いていることを知る。


前作は監督マイケル・ベイ&製作ジェリー・ブラッカイマーの中でも中規模な作品で、滅茶苦茶な脚本はともかく、勢いのある主役の若手2人の活躍のお陰もあって、内容的にはまずまず、興行的にも中規模のヒット映画だった。それがこのところの『アルマゲドン』(1998年)、『パール・ハーバー』(2001年)といったベイ&ブラッカイマーの大作志向に沿って、続編は大型作品へと変貌した。


この作品を一言で表すならば、醜悪な脂肪の塊が付いた見るも無残な大作だ。


前作の良さはズタボロの脚本もコメディだから許せるさとばかりに、ローレンスとスミスの魅力で笑わせ/引っ張った、お手軽なB級映画としての価値があった。つまりは2人の個性を殺さない程度に派手な場面を盛り込んでいた映画だったのである。しかし今回は内容の割りに2時間半という上映時間に表れている通り、全てが過剰でしかも悪趣味。確かに序盤のカーチェイスなどは、アイディアとそれを実現させてしまう製作規模に舌を巻くが、余りに緊張感の無い大味な展開と、犬も歩けばドンパチに当たるの連続で、途中からは観ていて食傷気味になってくる。


お気に入りの主役2人にまるで精彩が無いのにはがっかり。今やスターとなり、年齢的にも中堅どころとなった2人は、身体の動きからキレを失い、ギャグもあまり可笑しくないという悲惨さ。お陰でバカの1つ覚えの如く単調に押し寄せる大規模アクションにすっかり飲み込まれてしまっている。特に衰退著しいのはスミス。かつては『インデペンデンス・デイ』(1996)や『メン・イン・ブラック』(1997)といったSF大作で、特撮に負けない稀有なスターとしての資質を開花させていたのが嘘のよう。だからと言って、元々コメディ・センスも無く、無意味にキャメラをブン回すことに腐心するベイの演出に、彼らのサポートを期待する訳にもいかない。


今回の作品の足を引っ張っている要素に、猟奇的な残酷描写の数々も挙げられる。麻薬組織の制裁によるバラバラ殺人やら、死体安置所にて次々と死体の腹に手を突っ込む騒動、悪党どもが受ける露骨な肉体損傷の描写など、アクション・コメディ作品としては全く不要で不快な代物ばかりだ。少なくともこの作品の方向性はブラック・コメディでは無い筈。性質の悪いブラック・コメディにしてもだ、シリアスな残虐描写が多過ぎる。


クライマクスではキューバに乗り込み、他国だろうとなんだろうと所構わず好き勝手にドカンドカンやるという、アメリカの傲慢さばかりが目に付く趣向。描写だけでなく内容そのものもグロテスクの極みだ。最も、過去のベイ&ブラッカイマー作品でも他国への敬意や憧憬といったものが皆無だったので、今更ながら驚きはしないが。ジャッキー・チェン映画そっくりなカーアクション場面も、オマージュとかではなく単なる盗用にしか見えないのも興を削ぐ。


本編が終ってエンドクレジットが流れ始めても、この作品で一体何をやりたかったのだかさっぱり分からない。観客に出来るのは、単にベイとブラッカイマーの個人的趣味の暴走を眺めることだけなのだから。


バッドボーイズ2バッド
Bad Boys II

  • 2003年/アメリカ/カラー/147分/画面比:2.35:1
  • 映倫(日本):PG-12指定
  • MPAA(USA):Rated R for strong violence and action, pervasive language, sexuality and drug content.
  • 劇場公開日:2003.11.29.
  • 鑑賞日:2003.12.26./ワーナーマイカル新百合ヶ丘3/ドルビーデジタルでの上映。金曜21時からの回、237席の劇場は十数人の入り。
  • 日本版公式サイト:http://www.bb2bad.jp/ 見所紹介やウィル・スミス来日模様の動画など、パンフレットとの差別化を図っているのは有難い。