恋は邪魔者


★film rating: B
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

時は1962年、所はニューヨーク。男と対等になる為には恋を捨て仕事に勤しもう!という大ベストセラー『恋は邪魔者』の著者バーバラ(レネー・ゼルウィガー)は、自分を邪険に扱ったプレイボーイの名物ジャーナリスト、キャッチャー(ユアン・マクレガー)をテレビで名指しで非難する。突然ニューヨーク中の女性から敵扱いを受けたキャッチャーは、仕返しにとバーバラをたらし込んでスクープしようと画策するが・・・。

オープニングの20世紀フォックスのロゴが1960年代のもので、ついでに当時のシネマスコープのロゴが出、タイトルバックの洒落たアニメーションや音楽がやはり1960年代風。パステルカラー調の衣装やカラフルな撮影、オールセットで通し、演技も当時のコメディ風と、この映画のコンセプトは徹底した当時へのこだわりだ。華やかな画面やご機嫌なサウンドが見もの聞きものとなっている。


じゃぁ21世紀に何故こんな映画を作るのかというと、そこいらもちゃんと脚本に工夫がされている。男と女の本音を古式ゆかしいラブコメディに収めたナツメロ映画と思わせて、むしろ現代的な男女のありかた考察映画へと転じていくのだ。それを観るにつけ納得するという次第。終盤にもどんでん返しを用意していたりで、イヴ・アラートとデニス・ドレイクの脚本はなかなか巧みである。


ケネディ暗殺の前年であるアメリカン・ドリーム最後の年に時代を設定し、下手すると生臭くなるのを防ぐべく、徹底した懐古調コメディに仕立てたコンセプトは良い。


そこに放り込まれたのがレネー・ゼルウィガーユアン・マクレガーという、清潔感のあるスターたち。


レネーは『シカゴ』(2002)でのイメージ・チェンジなぞ忘れさせる、キュートな持ち味を発揮してのコメディエンヌ振り。演技派も良いけれど、やっぱりこっちの路線も忘れて欲しくない。それでも待ってましたとばかりに、クライマクスでの長台詞を延々1ショットで収めたくだりで女優根性を発揮、これはやっぱり彼女が主役の映画なのだ。ユアンは役に染まる無個性が個性の役者なので、ここではプレイボーイを気持ち良く、しかも嫌味無く演じていて悪くない。ただもう少し華が欲しい気もする。


チアーズ!』(2000)でチアリーディングの世界を魅力的に描いたペイトン・リードの演出はテンポも快調、エッチな分割画面で笑わそうとなどと工夫はしているが、どうも上滑りな感が否めない。所々クスクスさせるものの、笑いが弾けてしかるべきところで弾けず、またしんみりするくだりでも左程しんみりせず、全体に平板。もっと可笑しみと哀しみをメリハリ効かせた作りにすべきで、品良くまとまってはいるものの、ラブコメディとしてはどことなく物足りなく感じる。


しかし、この映画は最後の最後にご機嫌になる見せ場を用意していた。大作ミュージカルで味を占めた主役2人が、ここでも歌って踊って、魅せる。終わりよければ全て良し。このラストで、俄然映画への印象が上がった。


恋は邪魔者
Down with Love

  • 2003年/アメリカ/カラー/101分/画面比2.35:1
  • 映倫(日本):(指定無し)
  • MPAA(USA):Rated PG-13 for sexual humor and dialogue.
  • 劇場公開日:2003.10.18.
  • 鑑賞日:2003.10.18./ワーナーマイカルつきみ野5 ドルビーデジタルでの上映。公開初日の土曜19時25分からの回、186席の劇場はうちら夫婦も含めて7人の入りとはかなり寂しい。
  • パンフレットは600円。レイアウトもカラフル、1960年代初頭について触れた文章や、当時に似せたプロダクション・デザインや衣装についてのコメントなど。
  • 公式サイト:http://www.foxjapan.com/movies/downwithlove/ 文章はパンフレットと同じ。本編抜粋の動画、予告篇など。