トゥームレイダー2


★film rating: C+
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。


英国貴族の大富豪の令嬢にして頭脳・体力・度胸満点の秘宝ハンター、ララ・クロフトの活躍を観る映画は、主役のアンジェリーナ・ジョリーの活躍のみを観る映画でもある。


厄災をもたらすアレクサンダー大王の秘宝「パンドラの箱」の手掛かりである「生命のゆりかご」を狙う悪の科学者とララとの攻防戦を描いた続編は、詰まらなかった前作よりマシだが、それでも色々と文句を付けたくなる出来なのだ。


この映画最大の問題は、脚本の出来が良くないこと。冒頭のギリシアから中国山岳部、上海、香港、ケニアと世界を股に掛ける展開は、定石でも目を楽しませるし、アクション場面も各々それなりに工夫されていて、特に上海のくだりはジャッキー・チェン映画を勉強した後まで見られる。いや実際、脚本家たち(ディーン・ジョーギャリス以外にも、原案で複数のクレジットあり)は色々な冒険活劇を色々観て参考にしたのではないだろうか。そういった努力の跡は評価できるものだ。


それでも彼らには思い切った度胸が足りなかった。アクションと謎解きを畳み掛けた前半に比べて後半はちんまりとした謎解きにスケールダウン、作品全体もちんまりした印象にしてしまった。これだけ面白い主人公には、もっと大きなキャンバスが必要だったのだ。それに前作でも感じたが、リアル志向なのか超常現象志向なのか中途半端なのである。どうせ終盤はCGI製のモンスターたちが大暴れする場面も用意しているのだから、その後の恐ろしく詰まらないクライマクスの代わりに、荒唐無稽でスケールの大きな仕掛けを用意してくれれば良かっただろうに。それとも舞台となる現代という時代と、超常現象アクションの相性が悪いのだろうか(インディ・ジョーンズ・シリーズがそこいら辺に違和感が無かったのは、1930年代という時代設定にもあったのだろう)。またララ以外の登場人物は、スクリーンに登場するだけで上映時間を無駄に浪費する退屈なだけの存在。元恋人の傭兵も面白味が無く、悪役も小者で主人公に完全に位負けしていて、尚且つ魅力が無いときているのだから。


かつてはしっかりした脚本の『48時間』(1982)、『ダイ・ハード』(1988)、『フィールド・オブ・ドリームス』(1989)といった傑作・秀作を放ったローレンス・ゴードンともあろう人が、と嘆きたくなるではないか。


監督はヤン・デ・ボン。脚本のアイディアが面白かった『スピード』(1994)、『ツイスター』(1996)以降は、詰まらない脚本通りに詰まらない作品を連発している監督だ。そんな訳で、前作のぼんくらサイモン・ウェストに比べて真っ当な映画に仕上げ、作品への力の入れようも伝わり、アクション演出に観るべき点はあるものの、脚本以上には映画に面白みを与えることはついぞ出来ず、平凡な仕上がりにしてしまった。


だがアンジェリーナ・ジョリーは頑張っている。演技の硬さも取れ、アクションの動きも進歩し、荒唐無稽で完全無敵な豪胆そのもののヒロインに、余裕を持って成り切っている。セクシーさが強調された衣装も何のその、クイーンズ・イングリッシュもへいちゃらさとばかりに、自らの信念を貫き、危機また危機を難なく突破するヒロインを、軽々と演じている姿そのものが痛快だ。演技面でも娯楽アクションだからと手抜きは無い。ふと見せる優しい表情で、ヒロインにさりげない魅力を加えてさえいるのだから。


前作でこれまた死ぬほど詰まらない曲を提供していたグレイム・レヴェルから、名手アラン・シルヴェストリに交代になったのは喜ぶべきこと。テクノ調のリズムに弦による明確で流れるようなメロディ・ラインを乗せ、ヤン・デ・ボン好みの楽曲を提供している。但し、いつでもどこでもメインテーマを流し過ぎ気味なのはマイナスだ。


トゥームレイダー2
Lara Croft Tomb Raider: The Cradle of Life

  • 2003年/アメリカ、ドイツ、日本、イギリス、オランダ/カラー/117分/画面比:2.35:1
  • 映倫(日本):(指定無し)
  • MPAA(USA):Rated PG-13 for action violence and some sensuality.
  • 劇場公開日:2003.9.27.
  • 鑑賞日:2003.10.1./ワーナーマイカルシネマズ新百合ヶ丘9/ドルビーデジタルでの上映。映画の日の水曜18時30分からの回、240席の劇場は3割強の入り。
  • パンフレットは600円。オールカラーだし紙質も良く、見開きも2ページ入れるなど凝った作り。アンジェリーナ・ジョリーヤン・デ・ボンへのインタヴューはあるものの、こういった大作の割りに文章は少な目。
  • 公式サイト:www.tombraider.eigafan.com/ 予告、アンジェリーナ&ヤン・デ・ボンの来日記者会見模様など。各ページのコラージュは渋い色調も中々クール。劇場でも販売していた、ララの(というか、アンジェリーナの)等身大スタンダップ(ボール紙で出来た立て置き看板ですな)の販売もあり。