ターミネーター3


★film rating: B+
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

青年へと成長した”未来の救世主”ジョン・コナーの前に、未来から来た2体のサイボーグが現れる。人類滅亡の「審判の日」は回避された筈ではなかったのか?


ジェームズ・キャメロンの大ヒット作にさらなる続編を作ろう、などという蛮勇を犯すのもハリウッドならではか。ジョナサン・モストウ監督が誰もが期待しないであろうこの企画を引き受けたのは、勇気だけではなく勝算もあってのことだったのだろう。その心は、自分のテリトリーで演出すれば良い、と。実際に観てみると、適度な捻りと小味な作風は『ブレーキ・ダウン』(1997)や『U-571』(2000)と変わらず。ジャンル映画の素材を超大作映画に仕立てるキャメロンの作風を追い駆けることなく、背伸びせずに自分のターミネーター映画にしているのが好感が持てる。それが結果的に『1』に似た感触を映画から受けるという予想外のことになった。小規模で捻ったSFアクション映画だった、あの『1』にだ。


しかも意外にもモストウはユーモアの分かる監督だった。前半に織り込まれたギャグに対して、一部のターミネーター信仰者からは「過去のシリーズ2作を貶める行為だ」「セルフ・パロディが悲しい」などという批判もあるが、それ程このシリーズに入れ込んでいない僕は逆に感心した。加えて108分というタイトな上映時間。無駄に長い大作アクションが多い中、テンポ重視の編集と演出はありがたいことだ。


モストウのアクション演出は、『マトリックス』のワイヤーと露骨なCGを使いまくったアクションと比べると、古式ゆかしささえ感じさせる正統派そのもの。その分物体の重みや、人物が感じる痛さが伝わり、アクション場面に重量感を与えている。特に前半にある、クレーン車を使ったカーチェイスの迫力と盛り上がりたるや相当なもの。『2』の序盤における大型トラックとのチェイス場面に通じる興奮があった。


テンポ重視の反面、分厚いドラマ性には欠けるのは致し方無いだろう。浮浪者同然となったジョン・コナー像は納得が行くし、後半の精神的成長もスムースに描かれてはいる。しかし心の葛藤をえぐり出すまでには至っていない。ジョン・コナー役のニック・スタールは、美形だったエドワード・ファーロングと違った猿顔で違和感があるものの、演技自体は悪くなかった。何故か未来からの殺人機械に狙われる獣医役クレア・デーンズも悪くないけれど、彼女の役はプロットの一部であってもドラマ的に左程重視されていない。別にデインズでなくても良かったのではと思わせる。


しかしアーノルド・シュワルツェネッガーターミネーターはこれぞはまり役。やっぱりシュワは台詞の少ないこの役がベストだ。若々しい姿にも驚いた。新登場T-Xのクリスタナ・ローケンはシュワに匹敵する上背だし、硬質なモデル・ルックが適役と言えよう。


映画はラストに至って衝撃的な展開を用意し、物語の根幹にある時間軸に対する新たな解釈を行っている。このエンディングがこれまた賛否両論だが、これはこれで良いのではないか。ラスト・シーンの後に始まるエンドクレジットに流れるのが、ここに来て初登場のブラッド・フィーデル作曲によるあのテーマ曲。音楽担当のマルコ・ベルトラミは劇中ではフィーデルのテーマ曲を一切使わず、独自の素晴らしいSFアクション・スコアを付けていた。でも思えば、『1』も『2』もあのテーマ曲は劇中で殆ど流れていなかった。だからラストで鳴るテーマ曲により、この『3』のシリーズ中での位置付けがはっきりと明示されるのだ。中々面白い趣向じゃないか。


スカイネットに対する時流に乗った新解釈共々、これは捻った小技の効いたSFアクション映画なのだ。


ターミネーター3
Terminator 3: Rise of the Machines

  • 2003年/アメリカ、ドイツ/カラー/108分/画面比2.35:1
  • 映倫(日本):指定無し
  • MPAA(USA):Rated R for strong sci-fi violence and action, and for language and brief nudity.
  • 劇場公開日:2003.7.12.
  • 鑑賞日:2003.7.13./ワーナーマイカルシネマズつきみ野1/ドルビーデジタル
  • 公開2日目の日曜昼過ぎからの回、2館上映の内315席の劇場は6割程度の入り。雨天による屋内娯楽ということか、小さい子供連れが目立った。
  • パンフレットは700円。オールカラーに見開き、紙質も上質と力が入っている。『1』『2』の詳細な物語紹介、主要キャスト&モストウへのインタヴュー、フル・クレジット等。写真は多いが、文章量はまぁまぁか。
  • 公式サイト:http://www.t3-jp.com/ 来日したモストウ、製作のマリオ・カサール、アンディ・ヴェイニャへのインタヴューなど。最近の大作映画サイトとしては、内容はあっさりめか。ターミネーター製造元のサイバーダイン社公式サイトには求人あり。そういや大阪ユニバーサル・スタジオの「T2: 3-D」もサイバーダイン見学ツアーでしたな。