チャーリーズ・エンジェル フルスロットル


★film rating: B
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

証人保護プログラムによって匿われた人々の情報を組み込んだ指輪が奪われた。米政府から依頼を受けたチャーリー探偵事務所の面々に、数々の妨害が襲いかかる。果たしてその黒幕は?


冒頭のモンゴル雪山での大立ち回りからして、徹頭徹尾お祭り騒ぎのどんちゃん騒ぎの映画。主役の3人がきゃぴきゃぴ活躍し、派手なアクションが続き、話など無いが如し、というのは前作通り。だが意外と侮るなかれ、単なる二番煎じどころかスケール・アップしているのがミソ。それも荒唐無稽さが、だ。


主役3人は頭脳明晰で鑑識の知識も抜群、リンカーン・ライムもかくやという天才になっていて、この才能が強引に事件解決への糸口を手繰り寄せる、という超ご都合主義が凄い。無論、物語はアホな笑いと大掛かりなアクションの単なる繋ぎであって、取り合えずは筋のある”普通の”映画を観に来た観客への最低限のエティケットにしか過ぎない。この見事なまでの開き直りっぷりは、”普通の”ハリウッド大作映画でも滅多にお目に掛かれないくらい。脳みそ空っぽな娯楽映画として悟りの境地にさえ達していると言えよう。


だからこれを「脚本がなってない」「ご都合主義にも程がある」「そんな訳ねぇだろ」などと言うのもアホらしい。こういう映画だと思って楽しむしかない。楽しめない人は単に感覚が合わないだけ、という代物だ。


キャメロン・ディアスドリュー・バリモアルーシー・リューの3人は相変わらず大はしゃぎ。ボスレー役の陽気なバーニー・マックは彼個人としては悪くないが、3人とのバランスでは今一つ。前作のやる気の無い演技が最高だった(今にして思うと地だったのかも)ビル・マーレイの方が、映画の中でアクセントになっていて良かった。その他脇役は豪華で、影の薄いボーイフレンド達やクリスピン・グローヴァーらも続投、そこにジョン・クリースやら、オリジナルのエンジェルやら、T-1000やら、果ては大スターまでキャメオ・ロールで担ぎ出す賑やかさ。その中でも特に異彩を放つのがデミ・ムーア。脂身1つ無く筋張っていながらやけに大きい胸と、骸骨に皮が張り付いたような不自然な顔付きで、先輩エンジェル役を怪演。これが強烈である。


売りの1つであるアクション場面はどっ派手な特撮を多用したものに変化したので、元々さほど性格の描き分けもされていない、只でさえ肉体感がセルロイドにように薄い女優たちの影が、さらに薄くなってしまった。もちろんワイヤーワークを駆使したファイト場面もあるが、全体に大掛かりな、しかも不自然で「いかにもな」特撮が増えている。これが映画を全くの絵空事とやけに強調していて、結果的に見事なまでに記憶に残らない作品となっているのだ。観ている間に楽しけりゃ良いじゃないか。それ以上を期待するのは間違っている映画である。


チャーリーズ・エンジェル フルスロットル
Charlie's Angels: Full Throttle

  • 2003年/アメリカ/カラー/106分/画面比2.35:1
  • 映倫(日本):指定無し
  • MPAA(USA):Rated PG-13 for action violence, sensuality and language/innuendo.
  • 劇場公開日:2003.6.28.
  • 鑑賞日:2003.7.11./ワーナーマイカルシネマズ新百合ヶ丘3/ドルビーデジタルでの上映。金曜21:55からの回、237席の劇場は5割程度の入り。
  • パンフレットは800円。最近大作で多い、A4の若干幅広なサイズ。オールカラーで水着の写真もたっぷり、ファッション・チェックなどもあるけれど、見た目重視で内容が・・・という映画と同じ作り。みのわあつおの「教えて!チャーリー」というQ&Aページが面白い。
  • 公式サイト:http://www.charliesangels.jp/ 映画は勿論だが、往年のTVシリーズの紹介もされている。3人組の来日模様なども。