ザ・コア


★film rating: B-
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

地核(コア)の活動停止により、人類絶滅まであと1年と判明。世界各地で天変地異が起こる中、少数精鋭の学者・軍人たちは技術の粋を集結して作られたミミズ型探査艇に乗り、地核を再活動させるべく危険極まりない地底への旅に出発する。


最新の特撮技術で描かれる大掛かりな災害描写はさすがに迫力もあり、よく出来ている。序盤では次々と異変が起こり、さて原因は何だ、地核停止だ、という辺りはペースも好調。面白い滑り出しだ。


登場人物では、優秀なパイロット役のヒラリー・スワンクも熱演しているが、何と言っても自己顕示欲の強い有名学者を演じたスタンリー・トゥッチが面白い。どことなく胡散臭く、プライドの高さを前面に出し、芝居っ気たっぷりで見せる。その一方で、人類の危機を最初に察知した主役の地質学者を演じる、アーロン・エッカートは陰が薄い。


地核への旅が始まると、映画はご都合主義が相当に目が付くようになる。穴だらけで突っ込みどころ満載ゆえ、1970年代に作られたパニック映画を思わせ、大作映画で規模が大きい話なのに、何やら一昔前の安手の映画に思えてくるのだから面白い。こうなると、そもそも何で人類の命運を決する作業にバックアッププランが用意されていないの?、などと言うのは野暮というもの。だったらこういう映画を楽しんでやろうじゃないか、と思うものの、そうは問屋が卸さなかったのが残念だ。予想通りに脇役クラスがばたばた死んでいくのだが、その死に様が相当に強引で何やら悪い冗談のよう。まるで犬死にで後味が悪い。パニック映画は大勢の他人の死に様を楽しむという、只でさえ不謹慎な娯楽ではあるものの、せめてまともに台詞のある主要人物くらいは、まともな死に様で描いてもらいたいではないか。


地底の描写はリアル志向ではなく、飽くまでも見た目重視のファッタスティックな見栄え。眩しく透明なマントル対流やマグマの中、金属ミミズが進んで行く。巨大な水晶がごろごろしている巨大な空間など趣向を凝らした場面もあるが、さすがに地底の中は変化に乏しい。退屈寸前なのを、合間に地上での派手な大災害を挿入して持っている、というのが正直なところだ。


監督のジョン・アミエル(『エントラップメント』(1999))はSF映画としてではなく、リアルな人間ドラマを目指したとか。しかしそれも全体に大味で描きこみ不足の脚本では土台無理というもの。どうせならば134分も掛けることなく、もっとテンポを上げる方に専念すべきだった。作品の格以上のものを求め、結果的に映画の方向性を見誤った演出プランではないだろうか。


ザ・コア』は大掛かりな特撮場面は見ものだが、映画を救うべく孤軍奮闘で鳴らしまくるクリストファー・ヤングの音楽ほどには、娯楽映画に成り切れていない出来だ。


ザ・コア
The Core

  • 2003年/アメリカ/カラー/134分/画面比2.35:1
  • 映倫(日本):指定無し
  • MPAA(USA):Rated PG-13 for sci-fi life/death situations and brief strong language.
  • 劇場公開日:2003.6.7.
  • 鑑賞日:2003.7.4./ワーナーマイカルシネマズ新百合ヶ丘4/ドルビーデジタルでの上映。金曜18:15からの回、175席の劇場は20人程度の入り。
  • パンフレットは600円。オールカラーで頑張っていて、劇中では全貌が中々はっきりと見られなかった地中探査艇の紹介や、各シーンのVFXテクニック(CGソフトウェアなど)紹介など。
  • 公式サイト:http://www.thecore.jp/ メインページ下にある「地球には一体何が起きているのか?」をクリックすると、劇中で起きた世界各地の災害が動画で観られる。