刑事ジョン・ブック/目撃者


★disc rating: A

刑事ジョン・ブック/目撃者(1985)
Witness

  • 発売日:1985年
  • 発売元:Varese Sarabande(輸入盤)
  1. Witness (Main Title) / Journey to Baltimore (6:20)
  2. The Murder (1:20)
  3. Book's Disappearance (3:24)
  4. Futility of an Inside Job / Delerious John (3:05)
  5. Building the Barn (4:54)
  6. Book's Sorrow (2:43)
  7. Rachel and Book (Love Theme) / Beginning of the End (4:36)
  8. The Amish Are Coming (3:16)
  • Musicians: Michael Boddicker, Randy Kerber, Stewart Levin, Michel Mention, Chris Page, Pete Robinson, Clark Spangler, Nyle Steiner, Ian Underwood


フル・シンセのオーケストラによるモーリス・ジャール作。同じオケによる演奏で、ジャールはSF映画『ドリームスケープ』(1984)の音楽も担当していた。シンセ・オケなんて大ヴェテランも意欲的にやるもんだと思ったものだ。1980年代半ばの当時、YAMAHAが安価なデジタル・シンセであるDX7を出したのが大きかったのだろう。それまでも少しずつシンセを使っていたジェリー・ゴールドスミスが、一気にシンセ多投を始めたのも恐らくそのせい。このCDではシンセのクレジットは特に無いが、音からするとデジタルだけでなくアナログも使っているような気がする。ま、それは素人の耳、ということで。


アルバムは、列車の車窓から変わりゆく景色を眺める少年を捉えた冒頭に流れる『1.』から始まる。たおやかで牧歌的な曲だ。だが次に少年が公衆トイレでの殺人を目撃する『2.』で不気味かつスリリングになり、『3.』での不安へと続く。瀕死の傷を負ったブックと共に舞台はアーミッシュの村へ。曲は再びゆったりしたテンポになり、ジョン・ブックが村人たちと共に小屋を作り上げる『5.』で静かな歓喜を迎える。村の娘レイチェルとのほのかな恋もつかの間、悪徳警官たちの襲撃を返り討ちにする『8』へと続く。


映画の展開に沿った曲順とは言え、アルバムとしても中々聴き易いし、効果的である。また、全体にスローな曲が多いので、短い収録時間は正解。最近のサントラのように70分とかだったら、ダレてしまっただろう。


フル・シンセでも人工臭くない。自然の営みさえ感じさせる。その点ではヴァンゲリスに似たものがあるか。作風は全然違うが。だが何より、映画音楽の巨匠に眠っていた若い感覚が、ピーター・ウィアーという才人と出会ったときに花開いた。ここが聴き所と言えよう。


ミュージシャンのクレジットを見て、マイクル・ボディッカーの名前があってビックリ。調べてみると、ウィアー=ジャールの『モスキート・コースト』や、ゴールドスミスの『アウトランド』にも参加していたのだな。