ピアノ・レッスン


★film rating: A
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。

時は19世紀半ば。父の決めた結婚により、口のきけないヒロインは幼い娘を連れて、まだ見ぬ夫に嫁ぐ。だが彼女は夫よりも、粗野でありながらも繊細な白人男性に惹かれて行く…。


荒々しいニュージーランドの自然を舞台に、女性の精神的・肉体的な開放を描いたジェイン・キャンピオンの秀作。彼女自身の手によるシナリオも優れているが、一見難しそうな題材も、分かり易い暗喩を配置していて、実はそう難解でもない。例えば黒いヴィクトリア調のヒロインの衣装は、彼女が閉ざされた女性であることを、粗野な男の顔にあるマオリ族の刺青は、彼が白人にもマオリ族にも同化出来ないことを表現している。ヒロインの衣服が脱がされているのは精神の解放そのものなのだ。


ステュアート・ドライバーグの湿気を帯びた映像、マイケル・ナイマンの名映画音楽も美しい。ホリー・ハンターはヒロインを熱演。それまでのイメージとまるで違う役どころだ。普段は犯罪者役の多いハーヴェイ・カイテルは、無教養だが心優しいアウトローを繊細に演じ、従来のイメージを打ち破る素晴らしい演枝。夫役サム・ニール、娘役アンナ・パキンも好演である。


登場人物の心理を台詞で説明することを極力省いた作品で、それがかえって強烈な印象を残す。


ピアノ・レッスン
The Piano

  • 1993年 / オーストラリア、フランス、ニュージーランド / カラー / 120分 / 画面比:1.85:1
  • 映倫(日本):R指定
  • MPAA(USA):Rated R for moments of extremely graphic sexuality.
  • 劇場公開日:1994.2.
  • 鑑賞日時:1994.3.
  • 劇場:渋東シネタワー4 ドルビーステレオでの上映。