ゴーストシップ


★film rating: C+
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。


幽霊船という心躍る題材を扱ったダーク・キャッスル・プロ第3作目。同プロダクションは『リーサル・ウェポン』シリーズや『マトリックス』シリーズなど、一貫してアクション映画ばかり製作しているジョエル・シルヴァーと、『コンタクト』(1997)、『キャスト・アウェイ』(2000)などを監督したロバート・ゼメキスが立ち上げた、特にゼメキスの趣味性が強いホラー映画専門プロだ。第1作目の『TATARI タタリ』(1999)は観ているが、『13ゴースト』(2001)は見逃している。この2作品は、プロダクション名の由来となった往年のこけおどし怪奇映画監督ウィリアム・キャッスルのリメイク作だったが、今度は初のオリジナル作品。監督は『13ゴースト』に続いて登板のスティーヴ・ヘレク。社運を賭けたとまでは言わないのだろうが、大スターは出ていなくとも、ジュリアナ・マルグリーズ、ガブリエル・バーン、イザイア・ワシントン、それに新進のカール・アーバンといった中堅どころを並べ、特撮や大セットで頑張っている。


物語は1962年から始まる。


豪華客船上での凄惨な大量殺戮場面でまずは度肝を抜かれるが、トリック自体は『オーメン2/ダミアン』(1978)や『CUBE』(1997)にあったアイディアを派手に発展したもの。最近のホラー、例えば『スクリーム』シリーズや『ラストサマー』シリーズが、1980年代のスラッシャー映画と違って残酷・流血描写を控え目にしているのに対し、こっちはいきなりこれだもんなぁ。掴みという意味では十分OKだ。


舞台は現代に移り、サルベージを生業としているタグボート一行が、漂流しているくだんの豪華客船を発見し、乗り込む。そこは勿論、亡霊が巣食う忌まわしい場所だったのだ。

ショッキングな冒頭に比べると、幽霊船に乗り込んでからは恐怖も緊張感も薄れてしまう。これは単純に暴力描写が減っただけではないだろう。主人公ジュリアナ・マルグリーズの前に現れる少女も、タグボート船員たちに次々襲い来る怪異もそれ程怖くない。何より91分とコンパクトな上映時間なのに間延びするのが致命傷だ。どうせ心理的恐怖を狙った作品ではないのだから、遊園地のアトラクションみたいに次々と超常現象を見せてくれても良かったのではないだろうか。


しかしそう簡単にばっさりと切り捨てられない妙な魅力もあるのも確か。セットや巨大なミニチュアはスケールがあり、大作なのにCGIばかりに頼ってしまって量感を失った『スター・ウォーズ』新3部作に無いものがここにはある。特にミニチュア映像は、撮影や合成の中々高度な技術の助けもあって素晴らしい。その一方で、朽ち果てた船内ホールが蘇るCG映像も目を楽しませる。雰囲気や亡霊といった恐怖よりも、視覚面での衝撃を優先させた作りなので、こういった部分はさすがに見応えがある。


映画の中盤以降で明かされる真相は荒唐無稽で残虐極まりないものの、欲望に弱い人間を痛烈に皮肉ったものとして観ればまぁ面白い。それに何より個人的に興味深かったのは、終盤の展開がダグ・マクルーア&キム・ノヴァク主演の知る人ぞ知る隠れた秀作『魔のバミューダ海域』(1974)を何となく思い起こさせたこと。20年くらい前はテレビ東京の午前とか昼過ぎとかにちょくちょく放送されてたこのTVドラマ、機会があったらお見逃し無く。


映画のラストもお約束ながらホラーの定番ということで、この手の映画が好きな人は、暇だったらヴィデオで観ても良いかも知れない。


ゴーストシップ
Ghost Ship

  • 2002年 / アメリカ、オーストラリア / カラー / 91分 / 画面比:1.85:1
  • 映倫(日本):指定無し
  • MPAA(USA):Rated R for strong violence/gore, language and sexuality.
  • 劇場公開日:2003.1.11.
  • 鑑賞日時:2003.1.25.
  • 劇場:渋谷東急2 ドルビーデジタルでの上映。公開3週目、土曜11時からの回、381席の劇場は6割程度の入り。
  • パンフレットは500円。『魔のバミューダ海域』に触れた文章や、ジュリアナ・マルグリーズとロン・エルダードがTV『ER』内だけでなく実際の恋人同士なのに、この映画ではエルダードの片思いだとか、マニアックな解説は面白い。だが使いまわしの写真が多く、ちょい寂しい。
  • 海外公式サイト:http://ghostshipmovie.com/ 予告編、壁紙など。やはり低予算B級映画の扱い。