バイオハザード


★film rating: B
※A、B、Cの3段階を、さらにそれぞれ+、non、-で評価しています。


日本製人気ゲームソフト『バイオハザード』の映画版。脚本・監督はSFホラー『イベント・ホライゾン』(1997)のポール・W・S・アンダーソン。やはりゲームの映画化『モータル・コンバット』(1995)も手掛けたことがある監督だ。今回の映画では、演出の冴えよりも脚本に感心させられるところがあった。基本的にはオリジナル・ストーリーだが、ゲームの設定やキャラクターの一部を上手く取り込んでいて、これがなかなか侮れない。ゲームファンも普通の映画ファンも楽しめるという、稀有なゲーム原作映画になっている。


近未来の厳重警備の地下秘密基地を舞台に、潜入した特殊部隊がゾンビや怪物たちとの闘いをかいくぐってサヴァイヴァルしようとするこの映画、原作となったゲームをやった人ならばニヤリとすること請け合いだ。どうやら『1』『2』から数多くのネタをもらったらしく、知っている人ならば「あぁ、あすこね」と含み笑いをすることだろう。映画全体の雰囲気としてはアクション・ホラーといった感じで、『2』に近いか。怪物もゲーム通りのデザインがあったりで、そういう意味ではマニアックというか、かなり観客を限定している部分があるのも確かだ。


じゃぁゲームをやったことが無い人が楽しめないかというと、そんなことはない。どうやらポール・W・S・アンダーソンはゲームだけではなく、ジャンル映画の相当なファンのようだ。過去のSFホラー映画から数多くのネタを持って来ているので、SFホラー映画ファンならばニヤリとすること請け合いだ。知っている人ならば「あぁ、あすこへのオマージュね」と含み笑いをすることだろう。『エイリアン2』(1986)、『CUBE』(1997)等、色々な映画を思い出させる場面が散りばめられている。そういう意味でもマニアックというか、ある程度観客を限定しているのも確かだ。もちろんジョージ・A・ロメロの名作『ゾンビ』(1978)への目配せも忘れていない。音楽でも、あちらではイタリアのプログレ・バンド ゴブリンが担当していたのに対し、こちらはマリリン・マンソンマルコ・ベルトラミ(『スクリーム』シリーズ、『ミミック』(1997))と共同でスコアを担当していて、現代ロックでがなり立てるのが愛嬌だ。


そう、この映画はポール・W・S・アンダーソンのゲームとジャンル映画への愛情が満ち溢れている作品なのである。


それでは、ゲームファンでもなく、SFホラー映画に詳しくもない人が楽しめないかというと、やはりそんなことはないだろう。限定された空間を舞台に、次から次へと襲い来る危機をクリアしていく展開は、この手の映画としては正に王道だ。テンポ良く進む展開は飽きさせることがない。特に面白いのがある裏切りで、下手すれば単なる化け物映画として単調になりそうな作品にスパイスを与え、よく考えられた仕掛けとして上手く機能している。フラッシュバックの使い方も効果的だった。


やはりこの人ミラ・ジョヴォヴィッチにも触れなくてはいけないだろう。記憶喪失の主人公を演じていて、アクション自体の切れはともかく、これがどうしてSFホラー・ヒロインとして堂々たる絵になっている。『フィフス・エレメント』(1997)、『ジャンヌ・ダルク』(1999)と、2本の凡作・駄作リュック・ベッソン作品で開花した魅力が、今回はさらにスターとしての貫禄も付きつつあって、より一層魅力的。対照的に強硬なキャラクターとして登場のミシェル・ロドリゲスはちょっとタイプ・キャストだが、こちらも持ち味を出して印象に残る。


映画のラストは続編を期待させるB級らしいテイスト。何でもゲーム版『3』を土台にした作品になるということで、ずばりタイトルも『Resident Evil: Nemesis』と『3』の海外タイトルそのままのようだ。


バイオハザード』は新鮮味こそ薄いものの、気軽に楽しめるB級映画としてはまずまず合格点の映画だ。


バイオハザード
Resident Evil

  • 2002年 / イギリス、ドイツ、アメリカ / カラー / 101分 / 画面比:1.85:1
  • 映倫(日本):PG-12
  • MPAA(USA):Rated R for strong sci-fi/horror violence, language and sexuality/nudity.
  • 劇場公開日:2002.9.21.
  • 鑑賞日時:2002.9.15.
  • 劇場:ワーナーマイカルシネマズ新百合ヶ丘9/ドルビーデジタルでの上映。敬老の日、日曜夜の先行レイトショー。240席の劇場は満席。
  • パンフレットは700円。B4サイズの大型版サイズ、写真もふんだんに使った豪華版。舞台の図入り説明、銃器説明、ゲーム全作解説など、内容盛りだくさん。
  • 公式サイト:http://biohazard-movie.jp/ 予告編、壁紙、来日したポール・W・S・アンダーソン&ミラのインタヴューなど。インタヴューも含めて動画が非常に多いので、ブロードバンド向けかも。